後悔しない今から考える相続

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2015年1月に相続税制が変わった。課税対象者が拡大し、相続が身近なものになりつつある。それにともない急増しているのが相続に関するトラブルだ。相続を“争続”にしないためには、どのようなポイントがあるのか。また、いざというときに慌てないために、事前にどんな準備をしておくのが効果的なのか。近畿大学法学部教授として教鞭を執るかたわら、公認会計士・税理士として実際の案件にも数多く携わってきた八ツ尾順一氏に話を聞いた。
近畿大学法学部教授
八ツ尾 順一
1951年生まれ。公認会計士・税理士。京都大学大学院法学研究科(修士課程)修了。2003年から現職。13年には大阪大学大学院高等司法研究科招聘教授に就任。税理士試験委員(1997-1999)、公認会計士試験委員(2007-2009)を歴任。著書に『事例から読み解く 相続税の理論と実務』(ぎょうせい)、『マンガでわかる遺産相続』(清文社)等がある

準備せず突然亡くなると家族に迷惑をかけることに

―2015年1月に相続税法が改正されました。どのような人が影響を受けるようになりますか。

八ツ尾 非課税枠の基礎控除が2014年12月末までは、5000万円+(1000万円×法定相続人の数)だったのですが、改正後は、3000万円+(600万円×法定相続人の数)となりました。

相続税の課税対象となるにもかかわらず「わが家にはさほど資産もないので関係ない」と考えている人も多いようです。ただし、相続税には申告期限があり、相続の開始があったことを知った日から10カ月となっています。被相続人が亡くなった場合、亡くなったことを知った日から10カ月と、意外と短いのです。この間に分割協議を始め、まとめるとなるとなかなか大変と言えます。

―特に実家の親が急に亡くなった、都会で働いている子どもが被相続人になる、といった場合は手続きも大変そうです。

八ツ尾 私はよく依頼人や知人に冗談で「亡くなるときはどうやって死にたいか」と尋ねることがあります。ほとんどの人が「ぽっくり逝きたい」と答えるのですが、私は「それでは残された家族に対して無責任だ」と言っています。

突然亡くなると、まず銀行口座が凍結され、葬儀の費用など、当面必要な現金を引き出すことができなくなります。そもそもどの銀行に口座があるかわからない、さらに株式などの投資をやっていたかどうかもわからないため、家族があちこちに電話して確認することになります。亡くなったことを誰に連絡すればいいかわからないという人もいます。

資産を「見える化」して自分の「思い」を伝える

―そのようなトラブルを防ぐためにはどのような準備が必要なのでしょうか。

八ツ尾 まずは資産の「見える化」です。預貯金はもちろんのこと、株式など金融商品についても、銀行や証券会社などの一覧表をつくり、どこにどれだけの資産があるのか明確にしておきます。不動産についても同様に棚卸をしておきます。

ここで大切なのは、これらの資産を相続する場合、どれだけの相続税を支払う必要があるのかを概算でもいいので確認しておくことです。想定される相続税が手持ちの預貯金でまかなえるなら大きな問題はありませんが、足りない場合は何らかの対策が必要になります。

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