「人間とロボットのいい関係」のつくり方 リクルートテクノロジーズがロボティクスを活用した実証検証を実施
ロボットは人間の心理変化・行動変化を起こせるか
小川 今回の実験は、複数のロボット同士の対話がお客様の関心や行動意欲に変化を与えるかなど、複数台ロボットとのコミュニケーションによる人の心理変化・行動変化を検証するのが狙いです。最初に、リクルートテクノロジーズでは、当社との共同研究にどのような期待をされていたのでしょうか。
伊豆原 最大の狙いは、人間型ロボットがビジネスの現場で活用できるかどうかの検証でした。当社はこれまでも独自の対話エンジンを開発するなど、ロボットの対話精度向上をはじめとする技術開発に努めてきました。これを活用し、住宅購入に関する無料相談サービス「スーモカウンター」に人型コミュニケーションロボットを導入し、集客数などにおいて大きな成果を挙げています。しかし、集客効果は一定期間でシュリンクしてしまうこともあり、ロボットとの対話によって生まれる「心理面」の影響に大きな関心がありました。
稲川 当社では以前よりロボティクス事業においてさまざまな取り組みを進めており、その経験において、ロボットに対する社会的な期待が年々高まっていることを感じています。ただ、目の前にロボットを置かれると、何でもしゃべれて何でもできると思っている方が多いのですが、実際にはまだまだといったところです。社会の期待値と現状のAI(人工知能)の技術にはまだ大きなギャップがあり、ロボットを人に置き換えるにはまだ時間がかかりそうだというのが本音です。人が何をやりロボットに何をやらせるか、その使いどころを考える必要があると思います。
パンフレットの配布率が増加するなど大きな成果
小川 今回は「ゼクシィ相談カウンター」を訪れた、結婚式を行う予定のお客様に対し、Sota3体が応対して、指輪に関する情報提供を行いました。
伊豆原 集客ではなく、「接客」のシーンでの活用を検証しました。通常は、ブライダルアドバイザー(BA)と呼ばれるスタッフが対面でヒアリングなどを行います。実験では、BAが書類作成などでバックヤードにいる時間を有効活用して情報提供を行うとともに、お客様に楽しんでもらいたいと考えました。
稲川 ロボットを3体設置し、ロボット同士の対話でお客様とコミュニケーションを取るコンテンツを開発したことが大きな特長です。1対1の接客では、ユーザーの発言すべてに答えを用意しておく必要があります。それに対して、複数体であれば、ロボット同士が漫才のように掛け合いで会話するストーリーを通じて、情報を提供したり、ニーズを引き出したりすることができると考えました。
小川 デジタルサイネージを使った店頭での情報提供はどうしても一方向になりがちですが、ロボット同士の対話を空間サイネージとして、お客様にコミュニケーション空間に没入していただくことで、双方向性のある疑似体験をしていただくことができますね。
稲川 たとえば指輪の平均購入価格帯などのデータも、ロボットの言っていることであれば信憑性があると感じていただけます。さらに「あなたの予算は?」など、人間であれば聞きづらい質問をすることができるのはロボットならではだと思います。