ブロックチェーンが変える貿易業務の未来 東京海上日動が保険証券をブロックチェーンで共有する実証実験を開始

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同実験では、外航貨物海上保険における保険証券の電子化に伴いインプットとなる信用状、インボイスの電子情報をブロックチェーンから取得することで、従来幾重にも実施していたチェック作業を省略できるコスト削減効果や、即時に情報を共有することによる情報伝達時間の短縮化、手戻り削減による事務フローの効率化などを検証するという。「NTTデータにプロトタイプの開発をお願いし、その上で当社が、業務面での検証を行っています。L/C、B/L、インボイスなどのダミーデータを使い、保険証券への取り込みなど、実際の業務を再現し、その効果や使い勝手などを試しているところです」(新谷氏)。

現在、実験開始から3カ月と、ほぼ中間点を過ぎたところだが、期待していた効果が徐々に明確になってきた。「取引関係者がデータを共有するため、前述したように、書類のやりとりに時間がかかる課題が解消できます。さらに、当社自身の業務でも大きな削減効果が確認できています」。

新谷氏によれば、同社のシステムを利用して保険を申し込む場合、現状は平均15分の時間がかかるが、L/C、B/L、インボイスなどがすべてデータ化された場合、それが2分程度に短縮されるという。1日に10件の輸出がある企業の場合、年間約520時間の短縮(約87%の削減)になる。さらに、同社社内の作業時間の削減も特筆すべきだろう。同社では現行、L/Cから保険条件を一部手入力で転記しており、それが1件あたり30分かかるというが、それが5分に短縮されるという。同社では年間約2万件のL/Cを手入力しているため、約8300時間の短縮(約83%の削減)になるという。

NTTデータの豊富な知見や
技術開発力が頼りになる

実証実験は2017年3月まで行われる予定だ。得られた結果については改めて発表される予定だが、新谷氏が話すように、人的コストや書類の送達コストの大幅な削減や事務フローの時間短縮が期待できそうだ。「ただし、普及という観点では、課題もあります。ブロックチェーンは、関係者が分散型台帳を共有していることが前提となりますが、貿易取引では前述したように、関係者が多いことから、参加者が増えることが必須条件になります。そのため、参加者を増やすための活動を積極的に支援したいと考えています。」と新谷氏は紹介する。

同社は1879年、日本初の保険会社として誕生して以来、名実ともに日本の産業を支えてきた。日露戦争時の海上保険における戦争リスクの引受では、他社がたじろぐ中、自ら情報を収集、リスクを分析してこれに対応し、海外でも知られる存在になった。これは、同社が現在、『挑戦』をテーマに、さまざまな挑戦をする人たちを応援する取り組みにも繋がっている。

「リスクをテイクするにはその裏付けとなる情報も必要です。ブロックチェーンなど最新の技術においてもセキュリティなどの面で安心できなければ利用できません。その点で、NTTデータは、世界の最新の情報をキャッチしているだけでなく、人材も豊富で先進的な研究も行っています。さらに、さまざまな業界のシステムに精通しています。当社も毎週のように技術的なアドバイスを提供してもらっています。頼りになる存在です」と新谷氏は話す。

NTTデータの取り組みにより、ブロックチェーンのさまざまなビジネスの応用も可能性が広がる。サプライチェーンのトレーサビリティなども、より正確に、スピーディーになりそうだ。「当社自身も、NTTデータと一緒に、保険業界さらには、貿易取引におけるブロックチェーンの普及に挑戦していきたいと考えています」と新谷氏は力を込める。その実現に、今から大いに期待がかかる。