オフィスでは一日中PCと向き合い、ひたすらキーボードをたたいている。ちょっとしたメモ書きでさえもスマホに打ち込むのが日常となる中で、「今日は一度もペンを握っていない、それどころか直筆の文字を書いたのはいつのことだろう」という人も珍しくないのではないだろうか。
だが、いまでも「手書き」のほうがしっくりくるシーンは多い。たとえば、仕事で新しいアイデアを出さなければならないときは「まず手書きで」という人がいる。浮かんでは消える頭の中の言葉を大小自在にノートに記しながら、つなげたり図にしたりをカンタンにできるのは「手書き」ならではだ。アウトプットの形式に制限がなく、自らの手を動かすことで刺激にもなる「手書き」は、頭の中を整理しながらアイデアを練り上げるのに優れている。ただPCの画面上に整然と並ぶ文字を眺めるより、パッと見で要旨や思考のプロセスがつかめる「手書き」ならば、新たな発想の創出も容易だろう。こうした「手書き」の良さが見直されているのも、あらゆる場面で創造性が求められる機会が増えている一つの証左かもしれない。
そうしたクリエイティブな思考を鍛えたいのなら、書くものにもこだわって感性を磨きたいところである。この春、新たなスタートを切る人に向けたギフトとしても、センスが光る逸品になることは間違いない。
まず男性向けギフトとしておすすめしたいのが、クロスの「タウンゼント」だ。クロスは、米国生まれの高級筆記具ブランドで、創業は1846年と歴史は古い。円錐形の天冠が大きな特徴となっており、それは「コニカルトップ」と呼ばれ、長きにわたってステイタスの象徴と言われてきた。
中でも「タウンゼント」は、米国の公式行事などでも使用されたことで知られ、歴代のアメリカ大統領から深く愛されてきた1本である。その名の由来となった創業者の息子アロンゾ・タウンゼント・クロスは、当時の筆記具に革命的な影響を与えたまさにクリエーターだ。シャープペンの先駆けとなった「繰り出し式ペンシル」やボールペンの原型となった「スタイログラフィックペン」を生み出し、筆記具のデザイン、機能で26以上の特許を取得。筆記具のスタイルを刷新し、高級筆記具という新しいマーケットをつくり出したのだ。男性の手になじむ太軸で握りやすいのはもちろん、アールデコ調の優美なラインと、キャップのダブルリングが特長の重厚感のあるデザインが男らしさを一層引き立ててくれるのが魅力である。
女性向けギフトならば、やはり「クラシック センチュリー」だろう。何より、リングやネイルなど、手元のおしゃれを日頃から楽しむ女性にぴったりの華やかさがある。もともとクロスの創業者は金・銀細工職人であり、当時はジュエリーにしか使わなかった金や銀を高級筆記具にいち早く取り入れた先駆けのブランドである。1946年に発売された「クラシック センチュリー」は、当初から10金張、14金張、スターリングシルバーをそろえ、以来1億本を売り上げる高級筆記具の定番として世界で愛されている。
女性らしい精巧でしなやかなスリムボディは、フィニッシュ(仕上げ)が異なるとまた違った表情を楽しむことができる。まるでアクセサリーを選ぶように、その日の気分でペンを選んでそれぞれの魅力を堪能するというのもいいかもしれない。いまではマットブラック、艶のあるブラックラッカー、クロームにゴールドメッキのアクセントを取り入れたメダリストなどフィニッシュも豊富だから、贈る人の印象にあった1本が必ず見つかるはずである。
photo:Takeshi Hoshi / styling:Masahiro Tochigi
