なぜ、イノベーション創発には
デザイン思考が欠かせないのか?

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

デザイン思考実践企業講演
人を中心としたデザイン思考の実践

パナソニック
デザイン戦略室 室長
根岸 豊

パナソニックの根岸豊氏は、1951年に米国市場視察から帰国した創業者の松下幸之助が「これからはデザインの時代」と宣言したことに始まる同社の取り組みについて話した。62年には家庭の生活実態の観察や、家電の使用状況調査のプロジェクトを導入し、今のデザイン思考にも通じる商品開発の手法を取り入れた。近年は、デザインマネジメント改革として、デザインプロセスを分析、創造的段階を重視する方向への見直し、特A(重要商品)デザインへの経営資源優先投入、「フューチャー・クラフト」をグローバルのデザインフィロソフィーに制定することを進めてきた。「今までにない製品創出」として根岸氏は、イベント演出などでの利用が期待される風船型ドローン「バルーンカム」を紹介した。

ショートスピーチ&ディスカッション
徹底検証デザイン思考×経営の未来

横河電機 執行役員
マーケティング本部長
阿部 剛士
NOSIGNER
代表取締役
太刀川 瑛弼

最後に登壇者5人がデザイン思考についての見方などを語り合った。

横河電機の阿部剛士氏は、未来が不確実になるにつれ、問題分析よりも問題の本質を明確化するデザイン思考が重要になると指摘。見えないものを可視化する計測技術など同社の強みを生かし「SDGsなど人類課題の解決をビジネス機会にする際にもデザイン思考は重要」と話した。

デザイナーの太刀川瑛弼氏は、デザインを「形を通して関係性を生むこと」と定義。グッドデザイン金賞を受賞した防災ブック『東京防災』のデザインを例に「重要だが退屈な役所の情報も、雑誌や漫画の形をして面白いと思わせることで関係性の強度を上げられます」と話した。

慶應義塾大学の白坂成功氏は、関係性を多視点で構造化・可視化するシステム思考と、思考の流れを広げるデザイン思考を使ってイノベーションを目指す取り組みを説明。

慶應義塾大学大学院
システムデザイン・ マネジメント研究科 准教授
白坂 成功
博報堂コンサルティング
シニアマネジャー
西村 啓太

「多様性を活かすデザイン思考の有用性は実感しています。論理的思考と両方とも大事にすべきです」と述べた。

博報堂コンサルティングの西村啓太氏は、このままでは生き残れなくなる未来の市場環境に対応するため、社会・文化・経済性の視座から「どんな価値を提供する会社になるのか、未来のあるべき姿を描き、バリューチェーン、ビジネスモデルを構想することがわれわれのデザイン」と語った。

IBMの工藤晶氏は「未来をつくるためにデザイン思考を使おうという考えは正しいが、遠い先の事ばかりでは、社内で理解されにくい」と指摘。抵抗を受けながらも、小さな成功から始め「経営陣にもデザイン思考の効果を説明していくことが大切」という考えを示した。