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なぜ、イノベーション創発には
デザイン思考が欠かせないのか?

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
イノベーション創発のアプローチとして「デザイン・シンキング(デザイン思考)」の可能性を考える「デザイン・シンキング・フォー・ビジネス・カンファレンス」が2016年12月、東京・千代田区で開かれた。東洋経済新報社の田北浩章・常務取締役が「イノベーション、経営の場面で、『デザイン思考』という言葉をよく聞くようになっています。その本質に迫りたい」と開会あいさつ。続いて、ロジカル・シンキング(論理的思考)に偏ってきたビジネスに、右脳的、感覚的なデザイン思考を取り入れることの意義、実践例などについて、専門家や先進企業担当者らが語った。
主催:東洋経済新報社
プラチナスポンサー:日本アイ・ビー・エム
ゴールドスポンサー:博報堂コンサルティング

基調講演I
デザイン思考とイノベーション

経済産業省 商務情報政策局
生活文化創造産業課
(クリエイティブ産業課) 課長
西垣 淳子氏

経済産業省の西垣淳子氏は、デザイン思考が注目される背景や、国の取り組みを話した。車両を保有せずに配車サービスを提供する米国企業、縫製工場と顧客を結びつけ、服作りのサービスを提供する企業など、従来なかったタイプの競合企業の出現への危機意識を背景に、既存企業の中には、デザイン手法を取り入れて、利用現場の観察からニーズを洞察し、顧客価値の具現化を目指す動きが起きている。学校の運動会にヒントを得て、左回りトラックを走ることに特化した非対称靴底の運動靴開発などが好例だ。西垣氏は「ユーザーに支持される製品・サービスを開発する企業は、経営の仕組みをデザイン思考にしています」と述べ、関連の調査研究や、大学と連携した人材育成を進める考えを示した。

基調講演II
イノベーション経営の時代のデザイン思考

KIRO(知識イノベーション研究所)代表
多摩大学大学院 教授
Japan Innovation Network代表理事
紺野 登氏

KIROの紺野登氏は、不確実さが増す中で、経営モデルが市場分析と競争から需要創造に変化しており「トップは新たな収益のためのイノベーションを起こすことが仕事」と指摘した。そのためのデザイン思考プロセスは、ユーザーを現場で経験的に観察するエスノグラフィーなどの手法でニーズを把握。それを直観・ビジュアルに概念化し、素早くプロトタイピングして第三者にアイデアの実現可能性を伝えやすくする。そして、アイデアを受容してもらう物語を通じて現実化する試行錯誤を繰り返すことという。ただし、紺野氏は「感情、身体も使った全人的協創がデザイン思考の本質。ワークショップをすれば成果が出るものではなく、日常の組織の創造的ルーティンにデザイン思考を組み込む必要があります」と語った。

イノベーションセッション
企業変革に挑む、IBMデザイン思考

日本アイ・ビー・エム
グローバル・ビジネス・サービス事業 IBMインタラクティブエクスペリエンス事業部 事業部長
工藤 晶氏

IBMの工藤晶氏は、デザイン思考に対する同社の「本気の取り組み」を語った。1950年代からデザインを重視してきたIBMは、ジニー・ロメッティ現CEOが就任した2012年以降、デザインとデザイン思考の企業文化を全社に浸透させる取り組みを推進。1000人以上のデザイナーを採用し、そのキャリアパスや、デザイン思考の社内教育体制も整備した。顧客と一緒にデザイン思考を実践するIBM STUDIOSを世界各地に設置。観察、洞察、創作を繰り返すIBMデザイン思考の実践として、日本では高齢者見守りサービスアプリの開発などに成果を上げている。工藤氏は「一度試してダメだったではなく、繰り返しプロトタイプして、結果を積み上げてください」と呼びかけた。

特別講演
クリエイティブ・マインドセットと
デザイン思考を組織に取り入れる方法

IDEO日本オフィス
マネジングディレクター
マイケル・ペン氏

デザイン思考のパイオニアとして知られる、米国のデザイン・コンサルティング・ファーム、アイディオのマイケル・ペン氏は、1を100にする継続的カイゼンとは別の、ゼロから1を生む方法としてデザイン思考を紹介した。ペン氏は、社会学、脳神経科学、建築など、多様な専門性を備える人材が一緒になって新しい価値を生み出す同社の仕事のやり方や、「失敗から学ぶ」などのキーバリューに言及しながら「デザイン思考は単なるプロセスではなく、思考のあり方」と強調。ツールとして、人が求めるものを把握する『観察』、失敗と気づきを繰り返してより良いデザインを生み出す『プロトタイピング』、未来の実現に向けて他者とビジョンを共有する『ストーリー・テリング』の三つを挙げた。

デザイン思考実践企業講演
人を中心としたデザイン思考の実践

パナソニック
デザイン戦略室 室長
根岸 豊氏

パナソニックの根岸豊氏は、1951年に米国市場視察から帰国した創業者の松下幸之助が「これからはデザインの時代」と宣言したことに始まる同社の取り組みについて話した。62年には家庭の生活実態の観察や、家電の使用状況調査のプロジェクトを導入し、今のデザイン思考にも通じる商品開発の手法を取り入れた。近年は、デザインマネジメント改革として、デザインプロセスを分析、創造的段階を重視する方向への見直し、特A(重要商品)デザインへの経営資源優先投入、「フューチャー・クラフト」をグローバルのデザインフィロソフィーに制定することを進めてきた。「今までにない製品創出」として根岸氏は、イベント演出などでの利用が期待される風船型ドローン「バルーンカム」を紹介した。

ショートスピーチ&ディスカッション
徹底検証デザイン思考×経営の未来

横河電機 執行役員
マーケティング本部長
阿部 剛士氏
NOSIGNER
代表取締役
太刀川 瑛弼氏

最後に登壇者5人がデザイン思考についての見方などを語り合った。

横河電機の阿部剛士氏は、未来が不確実になるにつれ、問題分析よりも問題の本質を明確化するデザイン思考が重要になると指摘。見えないものを可視化する計測技術など同社の強みを生かし「SDGsなど人類課題の解決をビジネス機会にする際にもデザイン思考は重要」と話した。

デザイナーの太刀川瑛弼氏は、デザインを「形を通して関係性を生むこと」と定義。グッドデザイン金賞を受賞した防災ブック『東京防災』のデザインを例に「重要だが退屈な役所の情報も、雑誌や漫画の形をして面白いと思わせることで関係性の強度を上げられます」と話した。

慶應義塾大学の白坂成功氏は、関係性を多視点で構造化・可視化するシステム思考と、思考の流れを広げるデザイン思考を使ってイノベーションを目指す取り組みを説明。

慶應義塾大学大学院
システムデザイン・ マネジメント研究科 准教授
白坂 成功氏
博報堂コンサルティング
シニアマネジャー
西村 啓太氏

「多様性を活かすデザイン思考の有用性は実感しています。論理的思考と両方とも大事にすべきです」と述べた。

博報堂コンサルティングの西村啓太氏は、このままでは生き残れなくなる未来の市場環境に対応するため、社会・文化・経済性の視座から「どんな価値を提供する会社になるのか、未来のあるべき姿を描き、バリューチェーン、ビジネスモデルを構想することがわれわれのデザイン」と語った。

IBMの工藤晶氏は「未来をつくるためにデザイン思考を使おうという考えは正しいが、遠い先の事ばかりでは、社内で理解されにくい」と指摘。抵抗を受けながらも、小さな成功から始め「経営陣にもデザイン思考の効果を説明していくことが大切」という考えを示した。