なぜ、イノベーション創発には
デザイン思考が欠かせないのか?
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基調講演I
デザイン思考とイノベーション

生活文化創造産業課
(クリエイティブ産業課) 課長
西垣 淳子氏
経済産業省の西垣淳子氏は、デザイン思考が注目される背景や、国の取り組みを話した。車両を保有せずに配車サービスを提供する米国企業、縫製工場と顧客を結びつけ、服作りのサービスを提供する企業など、従来なかったタイプの競合企業の出現への危機意識を背景に、既存企業の中には、デザイン手法を取り入れて、利用現場の観察からニーズを洞察し、顧客価値の具現化を目指す動きが起きている。学校の運動会にヒントを得て、左回りトラックを走ることに特化した非対称靴底の運動靴開発などが好例だ。西垣氏は「ユーザーに支持される製品・サービスを開発する企業は、経営の仕組みをデザイン思考にしています」と述べ、関連の調査研究や、大学と連携した人材育成を進める考えを示した。
基調講演II
イノベーション経営の時代のデザイン思考

多摩大学大学院 教授
Japan Innovation Network代表理事
紺野 登氏
KIROの紺野登氏は、不確実さが増す中で、経営モデルが市場分析と競争から需要創造に変化しており「トップは新たな収益のためのイノベーションを起こすことが仕事」と指摘した。そのためのデザイン思考プロセスは、ユーザーを現場で経験的に観察するエスノグラフィーなどの手法でニーズを把握。それを直観・ビジュアルに概念化し、素早くプロトタイピングして第三者にアイデアの実現可能性を伝えやすくする。そして、アイデアを受容してもらう物語を通じて現実化する試行錯誤を繰り返すことという。ただし、紺野氏は「感情、身体も使った全人的協創がデザイン思考の本質。ワークショップをすれば成果が出るものではなく、日常の組織の創造的ルーティンにデザイン思考を組み込む必要があります」と語った。
イノベーションセッション
企業変革に挑む、IBMデザイン思考

グローバル・ビジネス・サービス事業 IBMインタラクティブエクスペリエンス事業部 事業部長
工藤 晶氏
IBMの工藤晶氏は、デザイン思考に対する同社の「本気の取り組み」を語った。1950年代からデザインを重視してきたIBMは、ジニー・ロメッティ現CEOが就任した2012年以降、デザインとデザイン思考の企業文化を全社に浸透させる取り組みを推進。1000人以上のデザイナーを採用し、そのキャリアパスや、デザイン思考の社内教育体制も整備した。顧客と一緒にデザイン思考を実践するIBM STUDIOSを世界各地に設置。観察、洞察、創作を繰り返すIBMデザイン思考の実践として、日本では高齢者見守りサービスアプリの開発などに成果を上げている。工藤氏は「一度試してダメだったではなく、繰り返しプロトタイプして、結果を積み上げてください」と呼びかけた。
特別講演
クリエイティブ・マインドセットと
デザイン思考を組織に取り入れる方法

マネジングディレクター
マイケル・ペン氏
デザイン思考のパイオニアとして知られる、米国のデザイン・コンサルティング・ファーム、アイディオのマイケル・ペン氏は、1を100にする継続的カイゼンとは別の、ゼロから1を生む方法としてデザイン思考を紹介した。ペン氏は、社会学、脳神経科学、建築など、多様な専門性を備える人材が一緒になって新しい価値を生み出す同社の仕事のやり方や、「失敗から学ぶ」などのキーバリューに言及しながら「デザイン思考は単なるプロセスではなく、思考のあり方」と強調。ツールとして、人が求めるものを把握する『観察』、失敗と気づきを繰り返してより良いデザインを生み出す『プロトタイピング』、未来の実現に向けて他者とビジョンを共有する『ストーリー・テリング』の三つを挙げた。