ポルシェ「新型パナメーラ」は何が進化したか 行儀と刺激が共存する4ドアサルーンの実力

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フロントは、バンパ−に開いた中央と左右の3つのエアインテークの形状が異なるが、旧型を継承したデザインといえるだろう。

全長5049mm、全幅1937mm、全高1423mmのサイズは旧型とほぼ同じだが、ホイールベースは2950mmで、旧型より30mm長い。これは一にも二にも後席の室内空間を稼ぐためだろうが、スタイリングにもいい影響を与えている。開口部の大きなリアハッチを開ければ495~1304リッターのラゲッジスペースが広がる。ワゴンのように使えるのがセダンにはないファストバックの強みだ。

ドイツの南、ミュンヘンのさらに南、オーストリア近くにあるヴァルヒェン湖を目指し、まずは助手席でパナメーラ4Sを試す。ヘッドレスト固定式で、シートバックが小ぶりないつものポルシェのシートは、相変わらず大げさな形状をしていないのにホールド性が高く、それでいてダラっとした姿勢も許してくれる。

リアにも半独立式の2座のシートがあり、「やってくれたまえ」とエグゼクティブごっこをしながら試してみたが、ホールド性こそフロントより控えめだが、同じくらい快適だった。

アウトバーンの質素なサービスエリアでドライバー交代。巨体に加え、サルーンとしては座面が低いため、ボディの四隅を把握しにくいが、バーチャルの俯瞰映像があるから車庫入れや縦列駐車はOK。

アウトバーンは時折渋滞になりかけの区間があり、飛ばしてはノロノロを繰り返す。前が開けたのを確認してアクセルを深く踏み込むと、クォーンと澄んだ排気音が控えめに室内に入ってきた。挙動は圧倒的に安定している。いいクルマだとまっすぐ走らせるだけでも心地よいという例のひとつで、ステアリングに手を添えているだけで、矢のように直進する。

4Sには新しい2.9リッターV6ツインターボエンジン(最高出力440ps/5650-6600rpm、最大トルク550Nm/1750-5500rpm)が搭載される。ポルシェは「旧4Sよりも20psパワーアップしたにもかかわらず11%燃費を向上した」と胸を張る。元々400psを超えるモデルの20psアップを感じ取るのは難しかったが、低回転域から高回転域までストレスなく回るのは印象的だった。トルクの山や谷が少ないので、大排気量NAのようなフィーリングだ。

行儀がいいやつと刺激的なやつ

半面、一貫して行儀よく速いが、ドラマはあまりない。刺激が欲しいなら4リッターV8ツインターボ(同550ps/5750-6000rpm、同770Nm/1960-4400rpm)を積む「ターボ」がオススメ。全域で十分以上のトルクが押し寄せてくるが、多くのクルマで加速が落ち着く100km/hあたりから、まるで1段目のロケットを切り離したような加速が味わえる。

全モデルが8速PDKと4WDを採用する。シャシーの目玉は彼らが「4Dシャシーコントロールシステム」と呼ぶ足まわりの電子制御システム。これはリアアクスル・ステアリング、エアサス、PDCCスポーツ(ロール抑制システム)、PTVプラス(トルクベクタリングシステム)、そして4WDを統合制御し、コーナリング性能を高めるためのもの。

1日の試乗はあっという間に過ぎた。MSBプラットフォームのなせるわざか、4Sでもターボでも、新型は旧型よりも軽やかなスーパーファストバックに変貌を遂げた。なにしろ車重が1.9トン前後あるにもかかわらず、コーナーを718ボクスターと同じように駆け抜けていくのだから!

(文:塩見 智)

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