東洋大学

学生時代の海外経験が大きな成長をもたらす 東洋大学

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東洋大学は、1887年に哲学者である井上円了によって「私立哲学館」として創立された約130年の歴史を持つ総合大学だ。哲学を建学の理念とする私立大学で、近年ではオリンピックでの水泳、陸上短距離、そして駅伝などスポーツ分野での輝かしい実績を残している。一方、2014年には、わが国の国際化を牽引する大学を重点支援する事業、文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」のグローバル化牽引型に採択され、グローバル人材育成の取り組みが加速している。「世界で存在感のある大学へ」と題したこの企画では、グローバルに活躍できる人材に求められる能力、その育成のために大学や社会がどう取り組むべきかについて、全6回の連載を通して明らかにする。第4回は、独立行政法人国際協力機構(JICA)国際協力人材部長の高島宏明氏を迎え、学生時代の海外経験の重要性について、東洋大学国際地域学部国際地域学科の芦沢真五教授と対談いただいた。
左から東洋大学 国際地域学部 教授 芦沢真五氏、JICA(国際協力機構)国際協力人材部長 高島宏明氏

高島 JICAは開発途上国への幅広い国際協力事業を展開するため、年間約2万人を海外に派遣しています。仕事内容によって求められる能力はさまざまですが、現地の政府機関への技術移転などを行う専門家の場合、大きく6つの能力が必要だと考えています。1.専門性、2.問題発見・調査分析力、3.解決策実行のマネジメント力、4.語学に加えて交渉力・共感力も含めたコミュニケーション力、5.開発協力に関する日本の手法や世界の潮流に関する知見、6.相手国・地域の社会、経済、宗教、文化への理解……それぞれの仕事に応じて高いレベルが求められます。一方、青年海外協力隊などのボランティアの場合には、現地の人々と一緒に行動できる力が協力分野での経験とともに大切になります。

芦沢 JICAには私どもの国際地域学科も大変お世話になっています。本学科には「将来、JICAのような国際協力機関に入りたい」と希望する学生が数多く入学してきます。2017年度新入生から国際地域学科では、少なくとも1クォーター(約6週間)の海外研修を義務付け、「現場主義」を重視した学びで、バックグラウンドの異なる海外の人々への共感力、国際的視野を育てることを目指しています。タイ・バンコクには、そのための拠点となるオフィスも設けています。海外に出て、自分しか頼れない状況の中で課題解決に取り組んだ経験は、卒業後、どこで働くにしても役立つはずです。

高島 そのとおりですね。海外は日本とは文化、環境、社会が異なるので、学生のうちに体験して慣れておくことは大切だと思います。また、専門性は大学だけでは完結せず、大学院での研究や、企業・行政機関での実務経験を通じて磨く必要がありますが、方向性を定めてその後の進路につながる学びを始めることは大事でしょう。また、国際協力の実務では、仕事の進め方、物事に取り組む姿勢、幅広い教養なども重要なので、学生時代から社会人としての基礎を固めていってほしいと思います。

芦沢 私たち国際地域学科には、資源や都市計画など国際協力の面でニーズが高い専門分野に教員を配置していますし、将来の専門性を意識した学びを始めることができます。また、途上国の国連オフィス等に学生を派遣する国連ユース・ボランティア・プログラムなど、学外のプログラムを積極的に活用することも勧めています。こうした国連のプログラムへの参加は非常に難関です。1年次から先輩の体験談を伝え、語学学習はもちろん、専門科目を英語で受講する学内留学プログラムなどの成果を学内ポートフォリオで学習進捗管理することにより、国際地域学科の学生もここ数年は毎年選抜されるようになりました。2016年度もアフリカ・ウガンダに1名派遣中です。

独立行政法人国際協力機構
国際協力人材部長
高島宏明
日本の政府関係機関として途上国の社会経済発展のためにさまざまな開発協力事業を展開するJICA(国際協力機構)で、パプアニューギニア、タイ、ラオス、アフガニスタンなどに在勤。2016年4月から現職。途上国の開発協力に必要な専門家人材のリクルートのほか、将来の国際協力人材育成のため、途上国開発に関心を持つ若者に、さまざまな体験の機会を提供している

高島 それはすばらしい取り組みだと思います。青年海外協力隊のボランティアを見ていると、若い人は、泣いたり、笑ったりと日本とは異なる環境の中で苦労することにより、大きく成長していくのがよくわかります。また、海外の異なる文化・環境・社会に触れることは、多様性を理解するだけでなく、日本を客観的に振り返ることにもつながります。

JICAでは、ボランティア以外に、大学生や大学院生のインターンを本部や在外事務所で計100名程度受け入れています。

さらに、国際協力のキャリア情報サイト「PARTNER(パートナー)」※1を開設し、NGOや国際機関の求人情報と、国際協力の仕事を志望する人とのマッチングを行うなど、国際協力を目指す人への機会提供に力を入れています。

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