セミナーレポート

稼ぐ力を引き出し、強い会社を
つくるために必要なこととは何かに迫る

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経営者講演
生き残る力=企業力を鍛えるクラウド活用

流体計画
代表取締役
山田 英樹

10年前、流体計画はゼネコンの下請けを中心にした会社で、5人ほどで年間1000件以上の案件をこなしていた。請求書の発行や見積書の作成などには表計算ソフトなどを使っていたが、全員がオーバーワークで仕事がうまく回らず、忙しいのに利益が伸びないという状況に陥っていた。そこで業務を効率化するためにパッケージソフトの導入を検討したが、システムでできない業務については「会社のほうがシステムに合わせなさい」と多くのベンダーに言われた。その中でセールスフォースだけは、やりたいことが実現でき、クラウド型なのでシステムの変更も容易で、しかも導入もスピーディだったため選んだ。山田英樹氏は、まず導入の経緯をそう説明した。

セールスフォースのシステムを導入したことで、物件ごとの発注管理や利益率の可視化が実現でき、個人別の利益率管理・コスト意識の強化もできたうえに、社内と社外でのコミュニケーションも円滑にできるようになったと述べた。

そのうえで導入後の10年を振り返り、数字をいつもぶれなくチェックできるようになったことが大きいと評価。事業内容や組織体制は大きく変わったが、セールスフォースのシステムはそれに追従してきたとし、今はセールスフォースと共同で建築会社向けのアプリ開発やゲストハウスの建設、運営にも取り組んでいることを明かし、「セールスフォースを使えば事業がどのように変わってもやっていける」と結んだ。

特別講演
これからの混迷の時代、勝ち残れる経営とは?
〜日本電産の会社づくりに学ぶ〜

DANTOTZ consulting 代表
元日本電産 取締役(M&A担当)
川勝 宣昭

日本電産時代、M&Aによる買収企業の再建を担ってきた川勝宣昭氏は、企業の再建には方程式があると指摘。意識改革、スピード、営業機関車化、断トツのコスト追求、損益の週次管理の五つがポイントだと続けた。中でも営業の機関車化とコスト追求を同時に推進すると営業部隊は戦いやすくなり業績向上効果が大となる。さらに損益の週次管理を取り入れれば、慢性的な未達体質を早期に改善することができると述べた。この手法は、日本電産グループ各社が未達をしない企業に変身できている隠れた要素だと紹介した。また意識改革によって「スピードと徹底」の企業文化を作ることが重要。これら五つのポイントを社長と幹部が一体となって進めれば、短期に黒字化が可能と語った。

これからの時代に中小企業が勝ち残るには、まず事業を見直し、企業を改革していくことが必要であり、その場合、経営者のリーダーシップ、業務革新のメソッド、意識改革の三位一体経営が決め手になる。さらに業務革新のメソッドとして重要なのは営業力強化とコストダウンであるとして、まず営業強化としては、自社の顧客構造や市場構造を分析し、さまざまな見える化手法を使って、組織戦力と個人戦力をハイブリッドで強化することが必要になると語った。またコストダウンを短期に実現するためには、「時間当り生産管理手法」や「道のり時間管理手法」などの他社がやっていない手法の導入によって、製造の工程ごとに「時間当りの効率」に着目して、徹底して無駄を削減したり、機種別の粗利を分析して無駄を省くなど、切り口はいろいろあると解説。意識改革については、農業を引き合いに出して、農業の場合は、まず土壌改良をやってから、種や苗を植えるように、企業経営の場合でも、まず意識改革によって企業の風土を良くしてからメソッドを投入しなければ、良い効果が出ないと述べた。さらに、意識改革による企業風土改革には、経営者一人が取り組んでは集団を変革することはできない。中間管理職を核とするモデル集団をつくり、経営者と一緒になって社員の価値観、思考様式、行動様式を変えていく。そうすることで新しいカルチャーが形成されていき、優れたメソッドで自社を再武装することができると語った。