地域を支える思いを備えた観光人材を育てる 東洋大学
飯嶋 同感です。グローバル化への対応の際には、日本人としての基礎がないと、それこそ根無し草になってしまいます。国際観光学部では、基盤教育(教養科目)で、日本の歴史、文化をしっかり学び、その基礎の上に専門領域を積み上げたいと考えています。
辰巳 地方を見てきた経験からお話しすると、地域振興でもう一つの核となるのは、熱意を持って夢を語れる人材だと思います。函館で毎年2回開催されている「函館西部地区バル街」は2004年にスタートし、全国のバル街イベントの先駆けになりました。私は第1回から参加していますが、本当に楽しいです。バル街の発案者であり、地元のスペイン・バスク料理店のオーナーシェフ深谷宏治さんは本当に熱い人。彼の語る夢が若い人達を引きつけていることが、原動力になっていると感じます。
飯嶋 テストで測れる知識だけでは、観光はうまくいきません。夢や熱意、思いやり、感性といった人間的な魅力も重要なので、国際観光学部では学習能力が高い学生と、人間的な魅力ある学生のバランスをとって募りたいと考えています。たとえば、今年度実施したある入試の課題レポートでは、感性を問うような問題を出題しました。地域貢献への強い思いを持った学生を、離島や厳しい状況にある自治体の高校から推薦してもらうことも検討しています。また、現場で地元の人々と連携し、魅力的な観光資源を発掘するといった実践的な学びにも注力します。
辰巳 学生の現場での経験は貴重な学びになりますね。テクノロジーの発達に伴って、直接観光地に行かず、バーチャルな体験だけで満足してしまうことが少なくありません。テレビの旅番組の視聴や、地方の自治体が東京に開いているアンテナショップでの買い物、テレビドラマや映画の舞台として取り上げられたことで、その観光地に行った気になるのではなく、実際に観光客が観光地を訪れるような情報発信の方法を考えていく必要があるのかもしれません。
飯嶋 確かに、効果的な情報発信の方法は重要なテーマですね。外国人旅行者はほかの外国人がブログやツイッターで紹介した場所を訪れる傾向があり、日本の政府や自治体の公式情報より、旅行者同士のクチコミの方が高い信用を集めています。
辰巳 いまはSNSの時代ですから、写真の効果は絶大です。写真の上手な撮り方を教えるのもいいかもしれません。あるいは写真に撮りたくなる風景づくりなども研究対象として面白いと思います。学生がそういうことも学ぶことができれば、将来にきっと役立つでしょう。大学は観光地の魅力を発信していくために必要となる、日本文化への理解、教養を多くの学生に身に付けさせていただきたいですね。そして観光する側も迎える側も、リベラルアーツが大切というのが私の持論です。
飯嶋 おっしゃるとおり、これからの観光産業には基礎となる教養があり、地域の課題を解決する人材が求められます。また、これから日本が観光立国を目指すにあたっては、観光政策を担当する公務員など、国際観光学部で学ぶ学生が将来活躍できる領域が、今後さらに広がるでしょう。国際観光学部では、実践的な教育を通じて学生の企画・提案力を育て、プラスアルファの能力を持った人材を育成することに力を尽くします。
辰巳 東洋大学の新たな国際観光学部が、これまでにない実践的な取り組みで日本の観光が抱える課題に切り込み、解決していける人材を輩出することを期待しています。