セミナーレポート

2年後の未来を今、体感せよ!

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あらゆるものをインターネットにつなげるIoT(Internet of Things)を身近に考える「S-cubism IoT conference」が10月に東京・港区で開かれた。駐車場の空き状況を把握する「eCoPA(エコパ)」やスマホで鍵を開けられる「スマート宅配BOX®」などのIoT製品の開発、販売を手掛けるエスキュービズム社が主催。ペナルティ・ヒデ氏と内田恭子氏が総合司会を務めた。クリッカーを使って、会場を埋めた参加者の意見をリアルタイムで集計するアンケートも行いながら、メディア、IoT導入企業、経営者、一般生活者、IoTプロジェクト担当者といったさまざまな視点からIoTの可能性を検討した。

オープニングあいさつ

エスキュービズム 取締役
武下 真典

ⅠT事業や家電製造販売などの子会社を統合して今年10月からIoTソリューション強化に向け、新体制を発足させたエスキュービズムの武下真典氏は、IoT領域は今後、急速な拡大が見込まれるものの、多くの企業では「どう始めていいか、わからない」「そもそもIoTの定義がわからない」といった戸惑いの声が多いことを示した。会場の聴衆アンケートでも「IoTの専門組織もできて、取り組んでいる」という回答は20%にとどまったが、「IoTが自社のビジネスを変革する」という回答は「2年後には」「いずれ」を合わせて約80%に達するなど、期待は高まっている。武下氏は「IoTに正解はありません。この会が、皆さまそれぞれのIoTに取り組むきっかけになれば」と話した。

IoT情勢について
−メディア視点でのIoT

IoT News 代表
小泉 耕二

IoTニュースの小泉耕二氏は、メディアの視点でIoTを解説した。土木工事を自動化・効率化する建機メーカーのスマートコンストラクション、プリンターのインクなど消耗品の残量をセンサーで感知して必要時に自動で注文するサービス、スマートフォンで管理する活動量計―と、イメージの異なる三つの事例を列挙。これらの共通点として、センサーのデータをクラウドにアップロードして、AIなどで処理、アクチュエート(動作に変換)するという一連の流れをIoTと定義した。IoTで何かしなければならない、となっている現在の風潮に対して小泉氏は「センサーの価格低下や機械学習の進歩などの技術発展の結果として、IoTができるようになったということにすぎません。IoTは手段であって目的ではないのです」と強調した。

ジェットエンジンのセンサー・データを使い、故障予兆を把握したメンテナンスや、燃費を向上させるフライトプラン作成を行い、単なるメーカーから脱した米国の巨大企業。建機の自動化にとどまらず、盛り土の土量を正確に把握できる精緻な測量をドローンを使って実現し、施工だけでなく、測量、図面作成、実績管理など工事プロセス全般にビジネスの幅を広げる建機メーカー。また、モノ側の処理と、クラウド側の処理を絶妙に組み合わせた車の自動運転技術。他社製のデバイスを利用してシェアを拡大したスマート・ホーム・サービス。約240社と協業して、工場向けIoT基盤開発に舵を切った産業用ロボットメーカー……などの事例を紹介。IoTに取り組む際に重要となる観点として「産業構造の変化を起こせるか」、「ビジネスプロセスのどこまでにスコープするか」、「どこまでをモノで、どこからをクラウドで処理するか」、「自社だけでやるか、他社と組むか」、「取得したビッグデータを独占するか、公開するか」を考えるように訴えた。

IoT導入によるインパクト
−導入企業視点でのIoT

ビジョン代表取締役社長
佐野 健一

海外用・訪日客用WiFiルーターのレンタルサービスやスタートアップ企業向けの情報通信サービスを提供するビジョン社長の佐野健一氏は、エスキュービズムのIoTソリューションを導入している企業の立場から語った。同社は、日本からの海外渡航者向けに世界200以上の国・地域で安く快適に使える「グローバルWiFi®」、訪日外国人向けには国内で使える「NINJA WiFi®」を提供している。特に、海外で利用できるグローバルWiFiのレンタル件数は、2012年度の約5万件から、2015年度には約65万件まで大幅に伸びている。このため、空港の同社カウンター前には早朝を中心に、受け取り待ちの顧客の長い行列ができる事態が発生。同社では、説明をせずに機器を手渡すだけで済む利用経験者と、説明する必要がある初めての利用者のレーンを分ける工夫をしたり、カウンターの間口を拡張する改装工事をするなどの対策を実施してきた。

この一環として、「グローバルWiFi 羽田空港店」の同社カウンター脇に、エスキュービズムとIoTソリューションの一つとして共同開発した「スマートピックアップ」を導入した。これは、メールで配信したQRコードをスマートフォン画面に表示して、読み取り機にかざすだけで、ボックスが開く仕組み。暗証番号を打ち込む必要もないので、ルーター受け取りにかかる時間を10秒以内まで短くでき、カウンターの渋滞解消に貢献している。待ち時間の削減は合計で月間約234時間と見積もった佐野氏は「顧客の待ち時間が減っただけでなく、カウンターの労働生産性も上がりました」と手応えを話した。同社は、さらに、無人申し込み用のキオスク端末「スマートエントリー」を今冬に導入。提携するログバー社のウェアラブル翻訳デバイス「ili(イリー)」のレンタルサービスを来年春から始める予定。佐野氏は「今後もIoT活用をどんどん推進していきたい」と話した。

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