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日本のドライフルーツ!市田柿を世界へ JAみなみ信州

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はたから見ると美しい柿のれんも、生産者にとっては細心の注意を払う対象だ

気が抜けない乾燥の1カ月

魚住さんが次に訪れたのが本島靖之さんの一家だ。自宅を訪れると敷地内の大きなビニールハウスには干し柿がのれんのように干されていた。文字通り「柿のれん」と言われるその様子は実に美しい。魚住さんも「きれいですね」と言いながら、しばらく見とれていた。

本島さんは、専業農家となって今年で3年目だ。精悍な顔つきで、頼もしく見える。将来の市田柿を担う若手生産者の一人だ。魚住さんが訪れた日も一家総出で加工を行っていた。本島さんは次のように語る。

「私たちは収穫から出荷まですべて自分たちで行っています。収穫してから3カ月間は朝から晩まで休みなく毎日作業に当たっています」

吸引式皮むき機できれいに皮をむいた柿は、ビニールハウス内などで専用の糸に吊るし、1カ月ほど乾燥させる。

「自然の中で、天日干しでつくる商品ですので、とくに皮をむいてから商品として出すまでの間は細心の注意を払います。湿気もある程度必要ですし、乾き過ぎてしまっても渋味が抜けないので商品にはなりません。いつも気候を考えながら作業しなければならないので、かなりの手間を要しますね」

実際、つねに天気を見ながらビニールハウスの窓を開閉したり、のれんの間隔を調整したりと、適度な温度と湿度を保つようにしなければならない。

また、原料となる良い柿をつくるために、木の状態を見ながら適切な柿園管理も必要だ。

「干し柿なので最後の干す段階が最も大事なのですが、それ以前に柿の木を手入れすることも重要になってきます。病気や虫が付かないように消毒作業をしたり、剪定や摘果作業など、かなり手をかけなければなりません」

こうした多くの手間をかけて乾燥したら、のれんから柿を外し、柿の中心部の水分を押し出してシワのない柔らかな柿をつくるため、専用の機械で柿もみを行う。水分が多い場合はさらに天日干しすることで調整する。柿もみをおこなった柿は、夜寝かせ、早朝に冷気をあて、一連の作業を何度か繰り返すと、やっとブドウ糖が結晶化した白い粉に覆われた干し柿ができ上がるのだ。

「できる前から、常連さんの注文が毎年来ます。やはりお客様に喜んでもらうのが一番。私たちの努力も報われます」

そう語る本島さんにとってもGI登録の意味合いは非常に大きいという。

「知名度が上がるということは、それだけお客様に喜ばれるものをつくらなければなりません。ブランド価値を守っていかなくてはならないのです。今までに以上に品質や衛生面について気をつかいながら、栽培・加工しなければいけないと考えています」

JAみなみ信州では今後、GI登録されたことで市田柿の生産ノウハウが地域独自の「知的財産」であることを生産者の意識に浸透させていくと同時に、新たな商品開発も推し進めていく方針だ。輸出拡大も、ドライフルーツの本拠地である欧州での展開も視野に入れている。「市田柿は乳製品やワイン、ウイスキーとも相性がいいのです。クリームチーズと市田柿と重ねてミルフィールのようにするなど、さまざまなアレンジができます。食物繊維が豊富で栄養価の高い市田柿は、きっと世界に受け入れられると思います」と田内さん。生産者である本島さんも市田柿の将来について期待を抱く。

「世界中に市田柿というブランドが広がってほしいですね。海外のお客様が自分のつくった市田柿を食べると思うだけで身が引き締まる思いです」

市田柿の販売時期は2月末頃までだ。
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