稼ぐ力を引き出す
ビジネスモデル・イノベーション
基調講演
2016年度下期の金融・経済展望
浜銀総合研究所の北田英治氏は、16年に入って荒れ模様の金融市場と景気の現状について解説した。円高・株安の背景には、中国景気の先行き、過度な原油安、米国景気、英国のEU離脱に対する四つの不安が挙げられる。政府・日銀は対策を講じたものの先行きの不安は払拭されず、企業の景況感は弱含んでいる。日本経済は上向きだが、浜銀総研は今年度の成長率を1%弱と極めて緩やかな成長にとどまると見積もる。北田氏は「大きな寄与が期待される個人消費が心細く、4番バッターがいない状況」と分析。その原因には、実質での雇用所得が伸び悩み、マイナス金利政策導入による利子配当収入減も受けた消費マインド低迷を挙げた。
世界経済は一進一退の状況。北田氏は「来年に共産党大会を控える中国経済の大きな下振れはないと見られます。一方、英国のEU離脱問題では、選挙を控える独仏が甘い姿勢をとりにくい点に要注意」と予想する。日銀は、短期をマイナス金利、長期の10年国債利回りを0%程度にするイールドカーブ(利回り曲線)コントロールを打ち出したが、北田氏は「2%の物価目標達成とのつながりが見えにくい」と批評。今後については「英国、欧州の動向による海外経済の下振れには注意が必要ですが、日米金利差の拡大などから、為替レートは円安・ドル高方向にゆっくり進むでしょう」と語った。
課題解決講演 テクノロジーと経営の融合
中小企業の『攻め』を生み出すクラウド戦略
~事例に見る成功の 秘訣とは~
セールスフォース・ドットコムの鬼丸康祐氏は、消費者側がより多くの情報を得られるようになり、購買プロセスの主導権が企業から顧客へ移行したことを踏まえた、マーケティング戦略を語った。たとえば、車を購入する場合、いきなり販売店を訪れる人は少ない。まずニーズを認知し、どんな車があるか情報を収集、比較サイトなどで候補を絞り込んでから販売店を訪れる。鬼丸氏は「情報収集、比較の段階で選ばれなければ購入には至らないということ」と指摘。販売前から顧客を知り、販売後も関係を持続できるように顧客接点を改革する必要性を強調した。
多くの企業は顧客情報を社内に分散させてしまっているため、顧客対応が一貫性を欠いてしまう。その課題に対し、セールスフォースは、さまざまな顧客情報を一元管理、最小限の入力と最大限のアウトプット、営業活動の現状の見える化、情報共有の迅速化、全データへのモバイルアクセス……を実現するカスタマーエンゲージメントのプラットフォームを提供する。好みの食べ物、趣味など宿泊客の情報を一元管理、従業員全員で共有してサービスに役立て、ソーシャルサービスを使って顧客と積極的につながることを推進して売り上げを33%もアップさせた旅館の事例を紹介した鬼丸氏は「企業の大きさにかかわらず、同じサービスを利用できます」とクラウドの長所を訴えた。