電通過労自殺問題、本質はどこにあるのか 残業規制を改革の俎上に載せるべき

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政府は先月、初となる「過労死等防止対策白書」を公表。それによると、調査対象1743社の約23%が、過去1年間で月80時間以上の残業をした社員がいたと回答した。

高橋さんの遺族側弁護士からの資料によると、高橋さんが2015年10月に行った残業時間は105時間に上り、翌月にはうつ症状を発症したと厚生労働省が認めた。

日本は2種類の過労死を正式に認めている。過労を原因とする心血管疾患による死亡と、仕事が原因で精神的ストレスによる自殺である。

2014年度における過労が原因の自殺および自殺未遂は93件で、前年度の99件から減少している。また、過労を原因とする心血管疾患による死者数も121件から96件に減少した。

塩崎恭久厚生労働相は記者団に対し、長時間労働に対する監視を強化したい考えを示し、電通については調査の結果に基づいて対処すると語った。

政府の働き方改革実現会議に詳しいある関係筋によれば、残業時間の上限を定めた新たな法律も検討される可能性があるという。

つまりそれは、労働基準法第36条を改正し、時間外労働について月45時間から80時間の間で上限を明記する可能性があることを意味すると、この関係筋は匿名で語った。

働き方改革実現会議は、来年3月までに「働き方改革実行計画」をまとめる見通しだ。

勤勉と犠牲

同会議では、新たな法律がそのような上限から特定の業界を免除するかどうかも議論される見込みだ。

雇用主を擁護する日本経済において、長時間労働に対する規制が検討されたとしても、反発を招かず実現することはありそうにない。

勤勉と犠牲は長らく日本の代名詞であり、社会からの強い期待が、雇用者と組合に積極的な改革を進めることを困難にさせている。

多くの場合、雇用者は雇われていることに対して深く感謝しており、たとえ条件が悪くても辞めたがらない。昇進するためには、同僚よりも長く働かなくてはならないと感じている人もいる。

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