電力自由化による日本の活性化、
競争力強化に期待。

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電力業界のデジタル化が進む
日本発のサービスの海外進出も

―「水素社会」や「スマートシティ」といった言葉を聞く機会も増えています。電力自由化も街全体での取り組みが進んできそうです。将来像などについてお聞かせください。

江田 大きなポイントは、IoT(モノのインターネット)の爆発的な普及です。さまざまな機器がインターネットにつながる時代になるとそれだけの電力が必要になります。といっても、そのために街にコンセントを数千倍も設置するということは現実的ではありません。ワイヤレス給電(非接触給電)が当たり前になるでしょう。街のいろいろなところで発電し、蓄電池に充電し、それをワイヤレスで給電できるという仕組みが夢ではなくなりつつあります。

ワイヤレス給電のデータはデジタル化されるので、いつ、誰が、どのような機器に充電したのかが容易に分析できます。デマンドレスポンス(電力需給の調整)の精度も高まるでしょう。将来的には、「ある街やエリアでは一定量のワイヤレス給電が無料」といったサービスを打ち出すこともできるでしょう。集客などにも利用できそうです。

―将来のお話を伺いましたが、現状でも、HEMS、スマートメーターなど、電力事業にかかわる企業にとってはITが重要になりそうです。

江田 電力業界そのものがアナログからデジタルの世界に移ります。中核の技術となるスマートメーターは30分に一度のペースで電気の使用状況を把握することができます。これを利用することで、たとえば、遠くに住んでいる親などが無事に生活しているかどうかを知ることができる「高齢者見守りサービス」なども可能になります。

デジタルデータが蓄積されることにより、電力会社が省エネのための使い方提案をすることもできます。さらに、同じような家族構成の顧客に対して他のサービスを訴求するなど、マーケティングにも活用できます。ただし、スマートメーターが導入されると、今、その家に人がいるのか留守なのかもわかってしまいます。情報セキュリティについては、議論を進める必要があります。

―電力自由化をきっかけに、日本発のサービスを海外に輸出することも考えられます。

江田 CO2の削減やエネルギーの効率的な利用は世界共通のテーマです。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟各国では今、電力の多様化を目指してさまざまな取り組みを行っています。再生可能エネルギーの積極的な活用も進めています。

当然、欧米の企業も成長著しいアジアのマーケットを狙っています。前述したように、今後はエネルギー産業そのものがアナログからデジタルの世界に移りますし、さまざまな機器との連携が当たり前になります。自動車、ロボット、産業機器、医療機器、スマートメーターをはじめとする計測器・センサーなどは日本が得意とする分野です。ワイヤレス給電の規格化や標準化などで、日本が主導権を握ることができれば、エネルギー企業だけでなく、さまざまな産業で一緒にシェアを拡大できます。ぜひ迅速に取り組み、優位性を発揮してほしいと願っています。

電力自由化をきっかけにした日本企業の競争力強化に期待しています。