進化するエコオフィスを経営の力に
使う側もつくる側も発想の転換が必要
―― 今夏も政府は、企業や家庭に節電を要請する見込みです。
中上 いずれの電力管内でも、電力の安定供給に最低限必要とされる予備率3%以上を確保できる見通しですが、関西や九州など一部の地域においては予備率が下限の3%まで低下することが予想され厳しい状況にあります。本来、1割程度の予備率が望ましいことを考えると、電力不足の危険が高まり、停電の可能性があることも想定しておかなくてはなりません。
震災以降、原子力発電所の代替としてフル稼働している石油火力発電所の設備の古さも気になります。第二次オイルショック以降、石油火力発電所の新設は禁止されてきたために、どの石油火力発電所も40年生なのです。万一、電力が足りないと困るからと温存してきただけに、必ずしもメンテナンスが十分とは言い難く不測の事態が発生することもあり得ます。あまり危機感をあおるのもよくありませんが、危機が身近にあることを理解し、意識して電気とつきあっていく必要があるでしょう。
―― エネルギーに対するマインドセットを変える必要がありますね。
中上 いままで使う側は、いつでも好きな時に好きなだけ電気を使うことが保障されていました。それが資源のない日本において実現できるのは、電気のエネルギー源をいつでも買って来ることができたからです。幸いシェールガスの登場によって、世界は売り手市場から買い手市場に変わり、石油も天然ガスも価格は下落傾向にありますが、日本はその恩恵をいまだ受けられずにいます。化石燃料がダメなら原子力というカードが切れないために足元を見られているのです。好きな時に好きなだけ電気が使える状況を支える基盤が、こうした脆弱な構造にあることを肝に銘じ、電力の供給が厳しい時には電気の使い方を控えるなど、つくる側を意識した効率的な使い方に根底から変えていかなければなりません。
一方、つくる側も電力需要のピークに合わせて発電所を建設するのではなく、契約の内容によって需要を平準化させる工夫をするなど発想の転換が求められます。いま、省エネルギー法でも、ピークカットを行った企業を評価するための仕組みづくりを進めています。ものづくりの工程を全面的に変えるのは難しいですが、自家発電や蓄電池などによってピークカットに貢献した企業は、「省エネを行った」とみなしてボーナス換算を行うなど、来春以降の制度化を目指しています。