日本企業の「稼ぐ力」を高めるために
CRE(企業不動産)マネジメントが
ますます重要に。
ジョーンズ ラング ラサール(JLL)
具体的には、投資家向けでは、オフィス、物流施設、商業施設、事業用地など各種不動産の売却や賃貸などの取引をサポートしています。また、投資用不動産の運用管理サービスなども行っています。事業法人向けでは、所有および賃貸物件のファシリティマネジメントのほか、オフィスや店舗、物流施設などの計画から設計・建設までのプロジェクトマネジメントでも国内外で幅広い実績があります。
社外取締役を設置する企業が増え
不動産の所有、活用に対する意識が高まる
福島 不動産は活用の仕方によって大きな収益にも、またコストにもなり得ます。CRE戦略が「稼ぐ力」向上の成否にもつながってきそうですが、日本の経営者の関心は高まっているのでしょうか。
河西 大きく変わりつつあります。日本企業では、生産現場や販売現場などコアビジネスにおけるコスト管理が徹底され、乾いた雑巾をさらに絞るような経営がなされてきました。ところが、不動産は総務部や施設部などに任せきりという経営者の方が少なくありませんでした。
しかし、最近になって、「伊藤レポート」が発表されたり、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードが導入されたりしたことから、CREに関心を示す経営者が増えてきました。加えて、社外取締役を置く企業も増えていることから、活用されていない不動産について「この不動産はなぜ持っているのか」といった議論にもなり、所有・賃貸する不動産の効率的な活用に対する意識が高まってきていると感じています。
福島 私もいくつか企業の社外取締役を務めさせていただいていますが、河西社長のお話にあったように、第三者の客観的な視点から経営に対して疑問を呈したり意見をすることは重要な役割だと考えています。
伊藤先生は複数の企業の社外取締役を務めていらっしゃいます。企業における社外取締役の役割についてどうお考えでしょうか。
伊藤 私自身の問題意識として言えば、社外取締役の役割は、企業経営者が持っていない、あるいは、うすうすと感じながら実践できていないような発想やコンセプトを提案することだと考えています。さらに、社会の常識として考えて、おかしいと思うような点があれば指摘をする。もちろん、常識と言っても、一般常識ではなく、一人ひとりの社外取締役ならではの知見や経験の裏付けがある常識です。
たとえば、先ほどの河西さんのお話で言えば、BS(貸借対照表)が大きいと資本コストがどんどん高くなってしまいます。不動産が資本コストを上回るリターンを上げられないなら売却することで収益性を上げることができるかもしれないと、社外取締役がアドバイスし、経営者の背中を押すことも大切です。
福島 JLLもグローバルにビジネスを展開されている多国籍企業ですが、そのガバナンスはどのようになっていますか?
河西 当社は1700年代にロンドンで設立された世界最大級の総合不動産サービス会社で、200年以上の歴史があり、世界80カ国、280拠点に6万人の従業員を擁し、グローバルにビジネスを展開しています。日本法人は1985年に設立され今年で31年目を迎えます。国内の従業員も1000人近くおります。
当社はグローバル本社をシカゴに構え、株式はニューヨーク証券取引所に上場しています。非常に透明性の高いガバナンスとなっており、取締役の大半は社外取締役により構成されています。加えて、前CEOのコリン・ダイアーは外部から招聘されました。