ジョーンズ ラング ラサール

日本企業の「稼ぐ力」を高めるために
CRE(企業不動産)マネジメントが
ますます重要に。
ジョーンズ ラング ラサール(JLL)

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コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードが公表され、企業の資本効率を重視するステークホルダーが増えている。その実現のために注目されているのが、企業の資産、特に不動産の効率化や適正化だ。欧米の企業では、本業と同様に企業不動産(CRE)戦略に力を入れているところが少なくない。日本企業が企業価値を高めていくためにどのような取り組みが求められているのか、また、戦略的なCREマネジメントはどのようにすれば実現するのか。そこで、ジャーナリストの福島敦子氏がモデレーターとなり、いわゆる「伊藤レポート」を発表し、日本企業に対して資本生産性、すなわち「稼ぐ力」の向上を提言した一橋大学大学院特任教授の伊藤邦雄氏と、世界最大級の総合不動産サービス会社ジョーンズ ラング ラサール日本法人社長の河西利信氏がディスカッションを行った。

グローバル市場で戦うために
日本企業に「稼ぐ力」の向上が求められる

福島 伊藤先生は、経済産業省が取り組む「持続的成長への競争力とインセンティブ〜企業と投資家の望ましい関係構築〜」プロジェクトの座長を務められ、2014年8月には「最終報告書(伊藤レポート)」をまとめられました。

日本企業に対して、最低限8%を上回る株主資本利益率(ROE)を達成することを提言されたのが大きな特徴です。

一橋大学大学院特任教授
Kunio Itoh  
伊藤 邦雄

一橋大学卒。一橋大学大学院商学研究科長・商学部長、一橋大学副学長を歴任。現在、一橋大学CFO教育研究センター長、一橋大学大学院商学研究科特任教授、中央大学大学院戦略経営研究科特任教授。三菱商事、東レ、住友化学など数多くの社外取締役を兼任。座長を務めた経済産業省プロジェクトでの最終報告書「伊藤レポート」は、 国内だけでなく海外からも高い評価を受けている

伊藤 「ROE最低8%」を明示した背景には、日本企業が陥っていた「持続的低収益性」のパラドックスがありました。日本の製品はイノベーション創出という点では国際的にも評価されていました。ところが、それを生み出している企業の収益性はずっと低かったのです。これを解消し「稼ぐ力」を企業が高めなければこの国の将来は危うくなります。

課題の解決のためには、一部の企業だけでなく、全体最適の視点で「インベストメント・チェーン(資金の拠出者から、資金を最終的に事業活動に使う企業までの経路)」にかかわる主要プレーヤーの意識を改革する必要があります。その問題意識から、約1年の議論を経て発表したのが「伊藤レポート」です。

「伊藤レポート」の発表時にはまず海外から「日本が変わりつつある」と、大きな反響がありました。それに応えるように日本企業でもROEを意識するようになった経営者が増えてきたと感じています。

福島 企業が「稼ぐ力」を高めるためには、売り上げを伸ばすこと、コストを抑えることの二つが必要です。ジョーンズ ラング ラサール(JLL)では不動産分野において収益の向上やコスト削減につながるサービスをグローバルに提供していますね。

ジョーンズ ラング ラサール代表取締役社長Toshinobu Kasai
河西 利信
一橋大学卒。1985年大和証券株式会社に入社。1999年ゴールドマン・サックス証券会社に入社、不動産投資運用業務に従事。2004年にはパートナーに昇格。2012年よりJLL日本法人の代表取締役社長に就任

河西 はい。欧米の多国籍企業では、所有・賃貸している不動産の管理を本部に集約し、一元的・戦略的に運用・管理しているところがほとんどです。さらに、当社のような総合不動産サービス会社に業務をアウトソーシングするところも少なくありません。一元的かつ戦略的なCREマネジメントを行うことにより不動産関連コストを約3割、金額にして百億円単位の削減ができた企業もあります。

一方で日本企業では、総資産のうちに不動産の占める割合が20%強と、欧米企業に比べて高いにもかかわらず、その効率化や適正化が遅れています。自前主義で、固定費が大きくなっているところもあるようです。当社は日本および海外の投資家・事業法人向けに、不動産の生み出す収益を拡大し、その所有・使用コストを適正化する各種サービスを包括的に提供しています。

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