
ITの世界に地殻変動が起きている
――IT市場が大きく変化しています。
山野: 2010年頃を境にIT市場に新たな潮流が生まれており、そのキーワードとなるのがクラウドとビッグデータです。ストレージを扱っているEMCでは、企業のデータ量が爆発的に増えていることを早くから把握していました。
その背景にあるのが、スマートフォン、タブレットなどモバイルの急速な普及です。一人ひとりがモバイル端末を持ち、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やクラウド上のサービスを利用する。そこで生成されるさまざまな情報がビッグデータとなり、ITの世界に地殻変動が起こっているのです。
クライアント/サーバー型技術を利用する時代から、クラウド、ビッグデータ、モバイルの技術を活用する時代へのシフトが加速していくという指摘がありますが、まったく同感です。
――そうしたパラダイムシフトが加速することによって、企業のビジネスはどのように変化していくのでしょうか。
山野: モバイルやSNSは情報をやり取りするだけではありません。SNSでつぶやく情報やモバイルの位置情報などのビッグデータを、クラウドを活用してリアルタイムに分析することによって、競争力の強化や新規ビジネスを創出することも可能です。
何よりも、情報をやり取りする端末台数が、従来とは異なる次元に突入します。現在のパソコン台数は世界で数億台程度と推定されていますが、モバイル端末は数十億台と桁違いのスケールです。そのため、企業のアプリケーションも爆発的に増えていきます。
たとえば、EMCジャパンの場合、社内の業務で利用しているモバイル用アプリケーションは約20にのぼり、その数、利用頻度ともにパソコン用のアプリケーションを上回るほどです。実際、メールやスケジュールのほか、統合基幹業務などの一部をモバイルでも利用でき、移動中のすき間時間を使って業務に必要な情報を入手するなど、仕事の効率が格段に向上しました。今後、企業の情報システム部門は、社内向けや顧客向けのアプリを容易に開発できるIT環境の整備が求められていくでしょう。
――そうした、新しい時代、新しいビジネスを支える情報インフラの要件はどうなりますか。

山野: クライアント/サーバー型が主流の時代には、業務アプリケーションごと、部門ごとにサーバーやストレージを用意していました。この垂直統合型の情報インフラではビジネス環境の変化に即応してシステム構成を変更するのは困難です。
そこでEMCでは、水平統合型の情報インフラを提唱しています。これは、仮想化技術を用いてクラウド上のサーバーやストレージ、ネットワーク、セキュリティなどの機能を抽象化し、プール化されたリソースを自動化された運用基盤の上で展開できる情報インフラです。EMCは、この課題を解消する製品を今年5月のEMC Worldで発表しました。
成長戦略を支援する情報インフラ
――その新製品は、どういった製品で企業、データセンターの情報インフラやビジネス環境をどのように変えていくのでしょうか。
山野: これまでのIT環境は、アプリケーションとサーバー、ストレージをそれぞれ1対1で物理的にひも付けていました。あるアプリケーションでストレージ容量が足りなくなった場合、ほかのストレージ容量が余っていても融通が困難でした。
こうした課題を解決するのがソフトウェアで定義されたストレージSoftware-Defined Storage(SDS)です。それを業界で初めて実現する製品としてEMCはViPR(ヴァイパー)という製品を発表しました。 ViPRはストレージの抽象化、プール化、自動化を実現するミドルウェアの役割を担います。特徴は、EMCのストレージだけでなく、他社製のストレージも仮想化・抽象化でき、企業ユーザーはサービスカタログから必要なストレージ容量を選んで増やしたり、減らしたりすることが可能です。
たとえば、新製品のキャンペーンでモバイル用アプリを配布する際、アクセスが集中するときにストレージ容量を増やし、キャンペーン終了後に減らすといった柔軟な運用が行え、企業の成長戦略に応じたIT環境を俊敏に利用できるインフラを提供します。
――新会社Pivotal(ピボタル)を設立しました。

山野: アプリ開発環境の重要性が高まる中で、Pivotalはそのプラットフォームを提供します。ビッグデータを処理するアプリを素早く開発するためのビッグ&ファストデータや、プライベート、パブリックを意識しないでアプリを開発できるマルチクラウドなどに対応します。ストレージ、インフラ、アプリ開発環境の抽象化を通して、新たなビジネスの取り組みをスピーディに実行できる環境づくりに貢献していきたい。
EMCジャパンでは、クラウド、ビッグデータ、トラスト(情報セキュリティやデータバックアップなど)を中核に情報インフラのリーダーとして、企業のIT環境を強力に支援するとともに、ビジネス価値の創造に貢献していく考えです。