人工光合成は“人類の夢”から
“必ず実現しなければならない課題”へ
オールジャパンを牽引するビジョン
井上教授の研究室では、この革新を実用化につなげるため、どこにでもある元素を使った反応中枢のデザインをはじめとする研究に取り組んでいる。
併せて、前記のように、井上教授は「An Apple」(All Nippon Artificial Photosynthesis Project for Living Earth)の領域代表者であり、多重・多層の異分野連携によって、誰もが自由に登れる、人工光合成の頂きへの道を拓こうとしている。オールジャパンのチームリーダーとしての、井上教授のビジョンはどのようなものだろう。
「初登頂、一番乗りを目指してしのぎを削るぎりぎりの研究レースが、ブレークスルーを生み出してきたことは必ずしも否定はしません。しかし、『人工光合成の実現』はそういう次元で語られるスケールを超えた、人類の“グランドターゲット”なのです。しのぎを削る闘いよりも、他者の研究成果を尊重して、切磋琢磨する連携姿勢から新たな局面が開けてくる。一分野の成果に期待するよりもむしろ、多分野の革新が重なって初めて、目指すべき頂きへの道が見えてくるでしょう」。
日本の人工光合成の研究は間違いなく世界の先端を走っている。この様子ならば、トップランナーの座を明け渡すことはなさそうだ。