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人工光合成は“人類の夢”から
“必ず実現しなければならない課題”へ

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なぜ人工光合成は人類を救えるのか

今日のEUは1951年に設立された欧州石炭鉄鋼共同体を前身としている。戦争が絶えない欧州の歴史にピリオドを打つため、長く争いを繰り返してきたフランスとドイツが、戦争の継続に不可欠な石炭と鉄鋼を共同で手当てすることにしたのである。この事実は、戦火が、エネルギーや炭素源の確保を目的として切られることを端的に表している。もはや、人工光合成が〝必ず実現しなければならない課題〟となっている大きな理由の一つがこれだ。

「人類のエネルギー消費量を1とすれば、全化石資源量は300~400しかなく、石油に至ってはあと40年で枯渇するとされています」。井上教授は語る。「これに対して、地球表面への太陽光エネルギーの照射量は1万倍で、すべての地域に降り注いでいる。つなぎと目されていた原子力の利用が難しくなったいま、社会の持続のみならず世界の平和を保つためにも、人工光合成の利用を加速させる必要があるのです」。

人工光合成はなぜ人類を救えるのか……。植物は、水と二酸化炭素と光だけから、自らの生命維持に不可欠なグルコース類と酸素をつくる。無尽蔵の太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い、その電子を二酸化炭素へ送り込んで化学エネルギーに変換。元の材料よりもエネルギー量の多い高エネルギー物質として貯蔵するのである。ここから人工光合成とは光、それも可視光と水から、高エネルギー物質を生成することと定義できる。研究者としての井上教授の活躍に期待が集まるのも、この人工光合成の定義に忠実な金属錯体によるプロセスを生み出したからだ。

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