日系企業が直面する
税務・法務課題とビジネスチャンス

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第3部
「米国税務における最近のトピック」

KPMG LLP
米国グローバルジャパニーズ
プラクティス
税務統括パートナー
五十嵐美恵

KPMGの五十嵐美恵氏は16年4月に発表された内国歳入法385条(過少資本税制)規則案について解説した。同案は、米国多国籍企業のコーポレートインバージョン(実効税率引き下げを狙った税率の低い外国への本社移転)対策とされるが、クロスボーダーや連結納税を選択していない米国関係会社間の借入れを負債ではなく、資本とみなすケースが増えることが予想される。借入が資本とみなされれば、支払い利子は損金算入が認められなくなり、元本の返済は分配とみなされ、米国税法上、配当、資本の払い戻しまたはキャピタルゲインとみなされるおそれがある。規則案は、貸し付け条件などの文書化を義務づける文書化規則、IRS(米国内国歳入庁)が、借入金の一部を負債、一部を資本と、分けて取り扱えるようにする区分規則、グループ内の分配や再編取引にかかる負債を資本として扱う要件を定めたリキャスト規則の主に3点で構成。年内にも最終化する方針とされ、五十嵐氏は「文書化に対応した手続きなどについて社内議論を始め、M&Aや再編を行う際には、抵触しない資金調達方法を検討しておくべきです」と述べた。また、工場やオフィスの新規および拡張投資や企業組織再構築における、税務プランニングの重要性についても言及した。

第4部
「米国法務における最近のトピック
─M&Aの最新実務を中心に」

長島・大野・常松法律事務所
ニューヨーク・オフィス
代表パートナー
渡邉泰秀

長島・大野・常松法律事務所の渡邉泰秀氏は、米国M&Aの最新トピックを紹介。最初に、売り主が企業、資産に関する表明を真実と保証する「表明保証」をめぐる保険の活用増加を指摘。保険料や審査期間の面で使いやすくなったが、カバーしきれない部分もあるとして、渡邉氏は「売買代金の一部を賠償金のために留保して第三者に預けるエスクローとの組み合わせ」を勧めた。二点目は反トラスト法執行の厳格化。民主党政権下では、当局が関連市場を狭く認識し、競争法上の問題が指摘されやすくなる傾向がある。審査に時間もかかるので、解約金を払って買収を解約できる契約条項を入れる例も増えている。また、国防上、懸念がある買収を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の適用も増加。渡邉氏は「審査に積極的に協力することが大切」と助言した。また、多くの上場企業が準拠するデラウェア州会社法が導入した、一定条件を満たせば株式公開買い付け後の合併に関する株主総会の承認を不要とする「ミディアムフォーム・マージャー」に関する規定を説明。最後に「買収は目的ではなくスタート」と、PMI(買収後の企業統合)の重要性を訴えた。