日系企業が直面する
税務・法務課題とビジネスチャンス
安定的に成長を続ける米国市場への投資を検討する 「グローバル経営支援セミナー米国編」が9月、 大阪、名古屋、東京の3会場で開催された。 東京会場では、約300人を前に、米国経済の現状や魅力、税務やM&Aの最新動向などに関する専門家らが講演。
開会あいさつで、
三菱東京UFJ銀行の小川浩一・国際業務部長は
「緩やかな拡大基調が続く米国市場は、グローバル展開のゲートウェイと位置づける日系企業も多い」と関心の高さを指摘。
米国のMUFGユニオンバンク、日本の同行国際業務部の両輪で「皆様の米国ビジネスを支援します」とアピールした。
共催:三菱東京UFJ銀行 東洋経済新報社
協賛:KPMG /あずさ監査法人、長島・大野・常松法律事務所
来賓あいさつ
米国大使館のアンドリュー・ワイレガラ氏は、米国連邦政府の投資誘致政策「SelectUSA」を説明。2016年6月に首都ワシントンで開催、17年も同時期に開催予定の「インベストメントサミット」への参加を呼びかけた。また、各州が、日本で日本語による情報提供をしているアメリカ州政府協会(ASOA)を紹介。米国への直接投資額2位(14〜15年)の日本への期待を示した。
第1部
「米国経済の現状と展望」
米国経済の中長期的成長力について、三菱東京UFJ銀行の佐藤昭彦氏は「先進諸国の中では平均年齢が若く、中国と比べても高齢化の進捗は緩やかです」と、人口動態の優位性を挙げた。米国では、海外から資金を集めることで資本ストックが順調に伸びていることに加え、トップ10企業が10年ごとに大きく入れ替わるなど企業の新陳代謝が活発なほか、盛んな起業、イノベーションが起きやすい環境もあり、経済活力は旺盛だ。こうした特徴について、佐藤氏は「1980年代以降、成長は鈍化しているものの、労働投入、資本投入、生産性向上の面で相対的に優位にあります」と指摘した。短期的な経済情勢については、好調な個人消費の一方で、ドル高・原油安の影響を受けた企業部門の設備投資が足を引っ張っていると分析。今後は「労働需給にはまだ緩みがあるので、引き続き雇用と賃金の上昇で消費を支えることが期待できます」と述べ、来年は2.1%程度の緩やかな成長を見込んだ。最後に、為替については、実質実効為替レートの点から中長期には円高を基調としながら、米国の利上げによる日米金利差拡大を受けて、短期的には円安に振れる展開を予想した。
第2部
「米国市場〜日本企業にとってのビジネスチャンス〜」【東京会場】
ジェトロの伊藤実佐子氏は、米国の魅力について、米国全体だけでなく、州ごとに見ても経済規模が大きく、米国最大のカリフォルニア州はインド、2位のテキサス州はメキシコを上回るなど「新興国50カ国が1国にまとまっていると見ることもできます」と語った。人種や学歴、考え方、言語、生活様式などの違いを内包する顧客層は多様性に富み、ビジネスインフラが整った地方は、企業の進出先として、労働・輸送コストが上昇している新興国に対抗する候補になり得ることも指摘した。ジェトロの米国進出日系企業実態調査では、黒字を見込む企業が14、15年と連続で8割超となるなど、欧州、アジアなど他地域に比べて好調さが目立ち、今後は、医療、環境、ITなどの分野の成長が期待されている。地域では、南東部、南部の各州が高い関心を集めており「事業コストの安さなどを背景に、製造業の集積が進んでいる」(伊藤氏)という。ジェトロでは16年、米国商務省SelectUSAと日米間の投資促進に資する趣意書(MOI)を締結。伊藤氏は「州政府事務所とも連携、支援しています。進出検討の際はご相談ください」と呼びかけた。