なぜ企業は「沖縄」に拠点を置くべきなのか 製造・物流ビジネスに変革が生まれる

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ANA Cargoは旅客機と貨物専用機、合計248機(2016年7月29日現在)を駆使し、世界40都市と国内52都市をつなぐ航空貨物ネットワークを誇る。沖縄貨物ハブでは、貨物専用機をアジアの主要都市に深夜に就航するなどし、深夜発・翌朝到着という、驚くべきスピーディーなダイヤを実現している。

たとえば農林水産品では北海道から出荷されると、香港のレストランや食料品店に翌日昼には着いている。このスキームに着目したヤマト運輸はANA Cargoと連携し、日本各地の農水産品をアジアへ1個口から輸送できる「国際クール宅急便」を2013年に商品化。沖縄貨物ハブ内にはヤマト運輸専用の仕分けエリアも備え、日本の農水産品などを今までに数百品目輸出している。このような高速物流の仕組みは、製造業による小口輸送にも応用できるだろう。

さらに特筆すべきは、スムーズな輸出を実現するために沖縄貨物ハブの施設内に税関検査エリアがあること。深夜にも検査に対応し、24時間の通関体制を実現しており、国内の空港では非常にレアなケース。沖縄の国際物流拠点化は、県のみならず政府が支持するプロジェクトであることが背景にある。

那覇空港の国際貨物取扱量は2015年、2008年に比べて約100倍、約17万4千トンになり、成田、関空、羽田に次ぐ国内第4位となった。この国際物流拠点を活用するために沖縄に立地した企業がある。詳しく話を聞くと、製造業企業にとっての「沖縄」の利点が明らかになった。

「沖縄に来ない理由がない」
現地立地企業が力説する

株式会社ナノシステムソリューションズ
執行役副社長・管理本部長 赤星 治

2015年4月に本社と製造拠点を東京から沖縄に移したナノシステムソリューションズ。光学関連機器や画像解析装置、半導体製造装置のメーカーであり、出願中を含み国内外43件の特許を持つ。日本でも最高クラスの技術者集団がなぜ沖縄に移転したのか、同社の赤星治副社長に話をうかがった。

「最たる理由は、やはり立地です。移転前より弊社は自社製品のターゲットのひとつに台湾の大手半導体メーカーを想定しており、沖縄は台湾に最も近い場所のひとつです。輸出に当たりコスト削減の恩恵は大きい。そして、もうひとつの決め手が、ANA沖縄貨物ハブがあったことです」。

同社の製品は数千万円以上する高額なものがほとんどで、輸送する際に破損しないことが何より大切。ANA Cargoは半導体装置の輸送のパイオニアとして、運ぶ技術の高さから世界的に信頼されているブランドである。

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工場内の作業風景

「夕方までにハブに持ち込めば翌日の午前中には納品できるスピードも重要です。トラブル対応のサポートも迅速に行えます。また、弊社が工場を賃貸している中城湾港新港地区は物流特区のために様々な優遇措置があり、ハブまで約30kmと近く、県の研究センターも集積。さらにサンゴ礁の堆積による埋め立て地のため地盤が固く、安定したクリーンルームが不可欠な弊社の事業にとっても万全な環境です。半導体で求められる環境温度の23℃はここ10年の沖縄の平均気温と同様で、更に1日の気温差も東京に比べて格段に少ないため、光学製品製造に求められる±0.1℃以内の厳しい恒温環境を維持するための電気代も約3割削減できるなど、メリットは多く、大きい。沖縄に来ない理由がありませんでした」。

今後、同社では新しい事業として、海外からのオーダーによる受託製造を計画中。自社の露光装置を使い、たとえばフラットディスプレーや有機ELの金型など、超精密加工品を製作する。その際には、特区内で海外から調達した材料を加工などしても関税などがかからない支援制度、保税制度を活用する予定だ。

さらに、赤星副社長が「沖縄だけ」と強く力説したメリットがある。

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