摘発されれば企業価値に甚大な被害
高まり続ける海外贈収賄というリスク
トムソン・ロイター・マーケッツ

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双日
法務部部長
守田 達也
国内、米国、インドネシア、シンガポールにて企業法務実務に携わり、プロジェクトファイナンス、不良資産処理、企業再編、M&Aなどのさまざまな案件に関与してきた。また、企業法務部の業務拡大に伴いコンプライアンス業務、危機管理等についても従事

守田 FCPAのリスクという観点では、制裁金に加えて、その調査・対応にも大きなコストが発生することも見逃せません。米国での弁護士、フォレンジック※などそのコストは何十億円、場合によってはそれを超えることもあり得ますし、その調査期間にかかるマンパワー等も考えると企業に甚大な損害を与えます。企業としては、防止対策を含めて準備をしておくことが重要と考えます。もちろん防止対策にも一定のコストはかかりますが、現実にFCPA問題となったときの対応コストに比べれば、十分ペイするのではないでしょうか。

富田 昨年になって経済産業省が「外国公務員贈賄防止指針」を改訂したり、今年には日本弁護士連合会が「海外贈賄防止ガイダンス」を発表したりするなど、日本でも取り組みが着々と進んでいますが、防止体制を構築するという点では、一体どこからやればいいのか頭を悩ませている日本企業も多くあります。先端的な企業はかなり進んだ取り組みを行っていますが、これから対策を取ろうとトップが気づいた企業では体制ができるまでのリスク管理が課題。トップの理解がある企業はまだいいかもしれません。担当レベルでは海外贈収賄のリスクに気づいていても、トップの意識が低いために予算が付かず、対策に乗り出せないという話も聞きます。

デューデリジェンスは「反汚職」の観点も必要

―リスクを認知した後、実際どう対応すべきかも悩ましいところです。

トムソン・ロイター・マーケッツ
代表取締役社長
富田 秀夫
共同通信社に入社後、国際金融情報分野を中心に担当し、共同通信マーケッツ営業一部長から、米金融システムソリューション日本法人社長、金融コンファレンス企画会社代表取締役を経て、2012年7月より現職。日本金融監査協会初代事務局長を務めるなど、リスク管理の高度化に長年関与している

富田 私がよく耳にする悩みは、現地語での対策ですね。コンプライアンスの方針について英語や日本語では対応していても、現地語ですべてをカバーするのは難しいようです。通報の窓口一つを取っても現地語で受け付けられるように調整しておかなければ防止対策ができていることにはならない。また、コンプライアンス全般が非常に範囲の広いものなので、何から手をつけるかのプライオリティづけに苦労している企業を多く見かけます。

守田 M&Aで海外の企業を買収する動きが活発化している中で、事前のデューデリジェンスにて問題が出てくる事案、また、買収後に新たに問題が見つかり対応に苦慮する事案があると思います。

※フォレンジック PC、サーバ、携帯電話など、電子機器に残るデータを収集・分析するなどして行う捜査
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