電子書籍の正しい「読み方」、教えます 【第1回】専用端末がそろい踏み、「本好き」は増えるのか
――電子書籍専用端末の普及によって、「本好き」が増えるのではないかと期待する声もあります。
それは期待しすぎです。現実的ではない。
学習や仕事に必要な本を除けば、読書はあくまでも趣味。買う余裕のある人、余裕のない人に分かれます。1年間に1冊も本を買わないという人もいます。そのような人が電子書籍専用端末を購入してまで本を読むようになるとは考えづらい。
これは知的レベルうんぬんの問題ではなくて、他の製品やサービスと同様に、所得と消費との間の統計学的な相関です。
日本人のうち、本をよく買って読むという人は、多めに見積もっても3000万人程度でしょう。電子書籍市場もそれぐらいと考えたほうがいい。ミラーレス一眼カメラやデジタル一眼レフカメラぐらいの市場規模です。パソコンや携帯電話の市場に比べればはるかに小さいのです。
――電子書籍市場の牽引役として、「マンガ」はどのような可能性があるでしょうか。
マンガは確かに一定の市場規模にはなるでしょうが、電子書籍市場全体を引っ張るまでにはならないでしょう。
前述した所得と消費の関係で言えば、「お金を出して購入する本はマンガだけ」という層がいます。1冊あたりの単価が低いということに加えて、通勤通学時に読む人という人も多い。ケータイやスマホの時間つぶしゲームと同じ市場です。「本好き」市場とは異なる。
僕は『面白い本』(岩波新書)や『ノンフィクションはこれを読め』(中央公論新書)などの書評本のほかに実用書も出していますが、書評本と実用書では、読者層がほとんど重なりません。
どの読者にどのコンテンツを売るのか、しっかりマーケティングする必要があるのはこれまで同様です。単に電子書籍だからと言って売れるものではありません。