[共催]
武蔵野銀行、ぶぎん地域経済研究所、セールスフォース・ドットコム
東洋経済新報社

【基調講演】経済動向・ファイナンスの視点
日本の景気は正念場
~3つのポイントに注目~
専務取締役
土田 浩氏
日本銀行から2016年6月、ぶぎん地域経済研究所専務取締役に就いた土田浩氏は、過去30年の日本経済の動向を振り返った。1985年のプラザ合意、円高不況に始まる金融緩和の継続がバブルを生成し、91年のバブル崩壊に至る時期を「戦後日本経済の転換点」と指摘。その後の年平均約1%の低成長について「ずっと景気が悪いわけではなく、成長率が下がった結果」と説明した。現在は、リーマンショックからの回復過程にあり、13年にアベノミクスで好転した経済指標も、14年の消費増税による反動減後は、横ばい状況が続いているとした。景気の先行きを占うポイントについて、土田氏は、海外需要・輸出を支える新興国景気の底入れ時期、円高による影響が懸念される16年度設備投資計画の実現性、実質所得が上昇に転じた後も低迷が続く消費マインドの改善、の3点を挙げた。
経済政策については「現在はほぼ完全雇用の状態にあるものの、景気が落ち込めば、貴重な人材がドロップアウトする恐れがあり、社会にとって大きな損失になります」と訴え、雇用の安定を強く意識した金融・財政政策をとるべきと強調。埼玉県経済について、圏央道周辺の流通センターを中心に事業所数が増え、首都圏の1都3県で比較しても好調を維持していることから「まだ発展の余地が大きいと感じます」と話した。
【課題解決講演】テクノロジーと経営の融合
中小企業の『攻め』を生み出すクラウド戦略
~事例に見る成功の秘訣とは~
第3営業本部
第3営業部 部長
植松 隆氏
世界約15万社が利用する顧客管理・営業支援プラットフォームをクラウド上で提供しているセールスフォース・ドットコムの植松隆氏は「今、求められているのは顧客を中心に考えたセールスです」と訴えた。同社製品は、顧客情報と、見積書や提案資料などの商談情報、日報やスケジュールなどの活動情報を一元的に集約し、顧客軸で見られるようにすることで、情報を活用しやすくする。活動や案件のシンプルな報告を入力すれば、商談の進捗状況を把握でき、営業担当の円滑な対応、上司の的確な指示を促す。
また、社内SNS機能を使って、上司とやり取りすることで、営業のノウハウが蓄積され、可視化される。クラウドサービスなので、初期投資が抑えられ、モバイルアクセスが容易なのも魅力だ。日本国内でも、大手企業から中小企業まで約1万社が同社製品を導入しており、豊富な活用の成功事例からビジネス戦略を学ぶことも期待できる。植松氏は、業績や商談状況をリアルタイムで把握することで、店長が経営の視点を持てるようになった徳島県の自動車ディーラー、顧客情報を徹底的に活用することで業界標準の2倍超になるリピート95%を達成した愛知県のペットトリミング会社の事例を紹介。「われわれと一緒に攻めのセールスを考え、企業価値の向上を図りましょう」と呼びかけた。
【特別講演】イノベーションと経営
イノベーションの神髄
~革新を止めているものは何か~
~革新の実践的な起こし方~
戦略経営研究科
フェロー
小林 三郎氏
ホンダで国産車初のエアバッグシステムの研究開発に従事した経験を持つ、中央大学大学院フェローの小林三郎氏は「新しいことをやらない企業、国は必ず滅びます」とイノベーションの重要性を語った。エアバッグの研究は、当時の久米是志社長と創業者の本田宗一郎氏からしか支持を得られず、大半の役員が反対したことを振り返り、「10人中9人が反対することの中にしかダイヤはない」と話した。「知識と経験を蓄積させた40歳過ぎには、論理が通じるオペレーションはできても、アートに近いイノベーションはできない」という持論を展開した小林氏は、多様なバックグラウンドを持つ若手のグループが、顧客価値のコンセプト創りの議論を繰り返して暗黙知を増やしていく「ワイガヤ」の実践を強く推奨。
高齢者の増加、富士山の世界遺産登録といった社会の動きに目を配り、顧客にとっての新しい価値を実現するアイデアをつねに考えることの重要性を強調した。
一方、40歳過ぎの上司の役割は、若手の提案の本質に目を向け、解決すべき問題点を投げ返すことにあるとして、内容を判断してつぶすようなことをしないように訴えた。最後に、イノベーションに最も大切なものとして「想い」を挙げた小林氏は「挑戦して失敗することを恐れるより、挑戦しないことを恐れろ」という本田宗一郎氏の言葉で講演を締めくくった。
【経営者講演】 中小企業の生き残り戦略
生き残る力=企業力を鍛えるクラウド活用
山田 英樹氏
京都市の建築会社、流体計画の山田英樹氏は、セールスフォース・ドットコムのシステムを使って事業を飛躍させた経験を語った。以前は「忙しく働いても、問い合わせに対処しきれないばかりか、儲かっているかどうかもわからない状況」だったことから、社内で情報共有を進めて、案件管理をきちんとやろうと、システム導入の検討を始めた。
数あるソフトウエアの中から、やりたいことが何でもできそうな点を重視して、セールスフォースを選択。導入は、年末年始休みの間に設定し、新年の営業初日に稼働できたほど迅速だった。導入後は、全員のスケジュールが可視化され、適切な営業活動を実現。稟議のシステムを活用し、見積もり数に焦点を当てながら売り上げ目標を管理したり、発注時に予算内で収めるようにコスト管理を徹底し、利益確保もできるようになった。受注見込みや会計情報は取引銀行との信頼関係構築にも貢献している。
1998年に町の水道工事業者として創業後、住宅建築、リフォーム業者として発展した同社は、木造ビル建築やゲストハウスの運営などのインバウンド事業、社内システムを同業他社向けに販売するIT事業にも進出。山田氏は「セールスフォースは、質の異なる事業にも対応できるシステムです。業務効率向上は、顧客とのコミュニケーションを増し、顧客満足にもつながっています」と語った。
