巧妙化するサイバー攻撃の防御にAIが注目
河之口 達也
本物にそっくりなメールに悪意のあるソフトウエア(マルウエア)を仕込む「標的型メール」、Webサイトを改ざんし、ページを見ただけでマルウエアに感染させる「水飲み場攻撃」などによる被害が後を絶たない。河之口氏は「従来、これらを防御するためには、マルウエアのパターンファイルを集め、マッチングを行ってブロックするのが主流でした。しかし、毎日、膨大な種類のマルウエアが生まれており、従来型の手法だけでは完全な防御は不可能になっています」と話す。
パターンマッチングならではの問題もあった。たとえば、定期的なパターンファイルの更新と、端末のスキャンが不可欠なことだ。更新時やスキャン時の負荷が大きく、業務への影響も少なくなかった。それでいて、既知のマルウエアは検知できても、未知のものには対応できなかった。「これらの課題の解決のために、注目を集めているのが、人工知能(AI)を活用し、マルウエアを検知する方法です」(河之口氏)。
機械学習を活用し、正常なファイルや不正なプログラムの要素を抽出。独自のアルゴリズムでパターンマッチングでは発見できない未知の脅威を高精度に検知するという。すでに欧米ではAIを活用したセキュリティ・ソリューションも登場している。
パターンファイル不要で、99%以上のマルウエアを検知
うれしいニュースがある。先進のAIセキュリティ・ソリューションを、日本でも利用することができるようになったのだ。「当社ではこの7月から、AIを活用した革新的なサイバーセキュリティ・ソリューションを提供する米国のCylance(サイランス)社と提携し、日本市場に提供を始めました」と河之口氏は紹介する。
具体的には、エムオーテックスとサイランス社が日本で初めて、相手先ブランドによる生産(OEM)契約を締結し、エムオーテックスのIT資産管理・情報漏えい対策ツール「LanScope Cat(ランスコープキャット)」にサイランス社の「CylancePROTECT」を統合した、「プロテクトキャット Powered by Cylance」がリリースされたのだ。
未知の脅威検知率99%以上
「CylancePROTECT」では、10億個を超えるファイルから約700万もの特性を分析・分類し、そのDNAを精査することで、対象物がリアルタイムで「良い」か「悪い」かを識別し、動作する前に駆除を行う。数学モデルとAIを活用した画期的な外部脅威対策製品だ
「CylancePROTECT」は、サイランス社の卓越したマルウエア識別能力の中核をなすもので、数学モデルとAIを活用した画期的な外部脅威対策製品である。10億個を超えるファイルから約700万もの特性を分析・分類し、そのDNAを精査することで、対象物がリアルタイムで「良い」か「悪い」かを識別し、動作する前に駆除できるという。全米75都市で開催したイベントにおける結果では、未知のマルウエアを99%以上検知することができたというから驚く。一般的なアンチウイルスソフトの検知率は20~50%とされるからその差は歴然だ。「さらに、当社の『LanScope Cat』と統合することで、未知の脅威の検知・駆除に加え、経路の追跡をワンストップで実現しました」(河之口氏)。
サイランス社の「CylancePROTECT」は、AIを活用した画期的なセキュリティ・ソリューションだが、マルウエアの検出に特化しているため、侵入経路の追跡やその後の再発防止策の構築などにはフォレンジックなどの専門的な知識が必要だった。その点で、エムオーテックスの「LanScope Cat」が頼りになるところだ。「LanScope Cat」は内部不正を防ぐPC操作ログの取得に注力したツールである。「いつ」「どのような」ルール違反が、「どの」PCで発生したかを一目瞭然で確認でき、そして誰に対してどのような対処をすべきかといったことも直感的に理解できる。
「プロテクトキャット Powered by Cylance」は、高度な専門知識がなくても使うことができる。サイバー攻撃をリアルタイムで可視化できるのはもとより、危険の程度や駆除の状況を一目で確認できる。また脅威を検知した際の周辺ログも取得できるので、マルウエアの侵入経路の追跡や再発防止策の構築に役立てることができる
安全性と生産性を両立させた製品・サービスを提供
高度な専門知識がなくても管理が可能な「LanScope Cat」にサイランス社の先進のAIソリューション「CylancePROTECT」を統合した「プロテクトキャット Powered by Cylance」がリリースされたことで、従来の方式だけでは防ぐことのできなかった未知の脅威に高い精度で対応できる、安心のセキュリティ環境が実現しそうだ。
その取り組みの背景となる考え方について河之口氏は次のように説明する。「ワークスタイルの多様化により情報漏えいのリスクは以前よりも急速に高まっています。さらにマルウエアなどの進入手口も巧妙になっており、マルウエアなどがいつでもどこからでも侵入するようになっています。情報システム部門の方が『不審なファイルは開くな』、『怪しいサイトにアクセスするな』と言っても、なかなか浸透しません。経営者も含めて、全社的な意識改革が必要です。一方で、この業界では、『脅威と対策はイタチごっこ』『リスクは増すばかり』と語られることを多く目にしてきました。そこで、当社は世の中から情報漏えいが少しでも減少するように、価値ある情報を発信したいという思いから『NO MORE 情報漏えいプロジェクト』も進めています」。
「NO MORE 情報漏えい」は、経営者、従業員、情報システム部門などがそれぞれの立場で「自分ごと化」できるよう、情報提供を行う取り組みだ。専用サイトでは、情報漏えいのリスクや対策などがケーススタディやコラムなどでわかりやすく紹介されている。
「むろん、安全性を追求するあまり、禁止するばかりでは生産性を損ないます。当社では、安全性と生産性を同時に追求する『Secure Productivity(セキュア プロダクティビティ)』というビジョンを掲げています。その支援につながる質の高い製品・サービスを今後も引き続き提供していきます」と河之口氏が語る。安全と生産性という相反することを追求することが、これからのセキュリティの本質なのかもしれない。
