
ERIの最大の強みは
全国の拠点網と技術力
ERIグループは建築物の審査や検査を行う専門的な第三者機関として、長くリーディングカンパニーの地位を保持してきた。かつて、建築確認を行えるのは行政のみだったが、95年の阪神・淡路大震災をきっかけに、99年からは民間企業でも建築確認が行えるようになった。ERIグループの中核会社である日本ERIは、民間会社で建設大臣(現国土交通大臣)の指定を受けた第1号の指定確認検査機関だ。現在でこそ、建築確認業務の民間比率は約87%に達しているが、その草分けの存在である。
最高執行責任者(COO)
増田明世
「これまでにない新たなビジネスであることから、当時はどの機関も行政OBに頼らざるを得ませんでした。それではいずれ行き詰まると考え、当社グループは、当初から若手の技術者の採用に注力するとともに全国のお客様を視野に入れた拠点ネットワークの構築に力を入れてきました」(増田社長)
その言葉どおり、設立から17年を経た現在ではERIグループには700人を超える一級建築士をはじめ、確認検査員などの有資格者が豊富にそろう。全国に拠点網を展開し47都道府県にきめ細かなサービスを提供できるのもERIグループが持つ強みだ。
省エネ審査業務で
圧倒的なシェア
業界のパイオニアとして設立されて以来、ERIグループは着実に実績を伸ばしてきた。建築確認検査および住宅性能評価ではともに業界トップのシェアを誇る。(16年7月時点・日本ERI調べ)
「確認検査や性能評価のほか、新しい制度や業務などにもいち早く対応してきました。建築にかかわる質の高いサービスをワンストップで提供できるのも、当社の特色だと自負しています」(増田社長)
たとえば、個々の住宅から超高層建築物まであらゆる建築物の確認・評価・診断の業務を一貫して行える。徹頭徹尾、同社内で完結できる体制のため、円滑かつ迅速・正確に行えるのが特長だ。
新たな業務の中でも注目されているのが省エネ関連だ。特に、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)評価業務の引き合いが増えているという。
建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)では、16年4月から、不動産事業者等は、新築・既存を問わず、販売または賃貸を行う住宅・建築物には、省エネ性能を表示するよう努めることが求められるようになった。BELSは、省エネ性能表示の努力義務に対応した住宅・建築物を省エネ性能で格付けする第三者認証制度である。
ERIは省エネ分野のニーズに応えるために、早くから専門部署の整備や人材の育成に努めてきた。BELSに関しても第1号登録機関であり、約74%のシェアを誇る(16年3月末時点・日本ERI調べ)。
ERIはさらに、BELSと併用できる「エネルギーパス※」の第三者認証サービスも提供している。「エネルギーパス」はドイツの制度で、断熱性能などを評価し、住宅が一年間を通して快適な室内温度などを保つために必要なエネルギー量をkWH/m2・年の単位で表示するものだ。ドイツでは不動産広告にもこの値が明示されているという。エネルギー単位のなじみが薄い日本では、「円単位」でも表示しており、年間の光熱費が一目でわかる。そのため省エネ性能をアピールするマンションデベロッパーや戸建住宅事業者などが、BELSを補完する営業ツールとして活用し、販売実績につなげているという。
※日本では、(一社)日本エネルギーパス協会が普及促進を図っており、日本ERIが第三者認証を行っている。

既存建築物の業務が急伸
ドローンの活用を計画
ERIホールディングスは16年6月、3年間(16年6月~19年5月)の中期経営計画を発表している。
増田社長はその内容について、「建築確認や住宅性能評価などの既存中核事業については経営資源配分の最適化と業務効率化の推進により収益力を強化するとともに、新成長事業、新規分野でも積極的に事業拡大を図っていきます」と説明する。
この中で新成長事業として位置づけているのが、前述した省エネ関連事業であり、「建築ストック市場」の関連業務である。
ERIグループの一員で、既存建築物の調査(デューデリジェンス)や検査(インスペクション)などの事業を手掛けるERIソリューションは16年6月、産業用ドローンの開発・販売を手掛けるスカイロボット社との業務提携を発表した。同社とERIソリューションは今後、最新鋭の4Kカメラや赤外線カメラを搭載したドローンを活用することにより、建築物の劣化状況などを調査する新たな手法を確立する計画だ。
従来、これらの調査は通常足場を組み、目視や打診などの手法で行うが、ドローンの採用により大幅な省力化とコストダウンが可能になるだろう。もちろん、これまで高所作業に携わっていた従業員の安全面でのリスクも低減する。
「14年には国交省から、『検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン』が公表されました。今後は、これらの調査により、既存建築ストックの活用がさらに進むと考えています」(増田社長)
ERIグループの売上高構成比でも、既存建築物に係る業務の割合が増えているという。着実に事業の柱の一つに育ちつつある。
人材こそが生命線
M&Aや海外も視野に
新築住宅着工戸数は将来的には減少することが予想されるが、政府が重要政策として進める既存建築ストックの活用などと同様に、建築確認や性能評価業務は依然として同社の中では成長分野とも言える。
「たとえば建築確認検査における当社グループのシェアは業界トップクラスを誇っていますが、それでもまだ7・7%程度です。当社が拡大できる余地はまだ大きいと考えています。また、今後は前述した既存建築物分野を中核事業化することにより、収益の拡大が目指せます。さらに、来年4月より実施される大型建築物の省エネ基準適合義務化も当社の業務の原動力になると考えています。ただし、懸念材料があるとすれば、人材不足です」(増田社長)
現在、建設業界は活況だ。大手ゼネコンをはじめ、どの企業でも技術系の学生など人材の採用や囲い込みに躍起になっている。検査機関が人材を獲得するのは容易ではない。そのために、今年から全国の建築にかかわる学生を対象とした「ERI学生デザインコンペ」も始めている。
同コンペでは、業界で活躍する建築家を審査員に迎え、ERIグループの理念である「良質なすまい・建物を実現し、安全で美しい街づくりに貢献」することを目的に、次世代を担う学生への支援の一環となることを目指している。取り組みを継続することで、同社グループの認知度の向上や事業への共感にもつなげていく狙いだ。
「検査機関業界の再編も進んでいます。人材の確保や市場シェアの拡大を目指し、M&A(合併・買収)も積極的に活用していきます。将来的には海外における事業展開を行うことを念頭に情報収集を行っています」と増田社長は力を込める。
ERIの成長の源泉は技術力に他ならないが、その技術力とは人材あってのものだ。経験と知見を備えた人材が多くいるからこそ、市場の変化やニーズを先取りし、持ち前の技術力を駆使してその解決方法を提供し続けることができた。ERIはこれからも人材を採り、育て、そして成長力を維持し続ける。


