インドネシア外資法改正に伴う投資促進への期待と留意点
【講演Ⅰ】
インドネシア進出成功のための法務上の留意点
~現地最新動向を踏まえて~
ジャカルタ駐在経験もある森・濱田松本法律事務所シンガポールオフィスの塙晋氏は、インドネシアの外資規制について一部でも外資が入れば外資会社(PMA)と規定されると説明。今年のネガティブリスト改正で100%外資開放された事業の中でも関心が高い「製造業と関連するディストリビューター」については「インドネシア国内製品に限られるか海外製品も含むかなど細部は必ずしも明確ではなく、今後の議論や実務の動向を注視する必要があります」と述べた。合弁契約については、少数出資の場合、拒否権事項に何を定めるかが重要であり、一方、同国労働法制は労働者保護傾向が強く、解雇は労使間協議不成立になると、労働裁判所で長期係争の覚悟が必要である。さらに外国人労働者規制は強化されており、出張者は就労許可に当たる外国人雇用許可取得を求められないように現地での活動に注意すべきこと、を訴えた。
東京オフィスの梅津英明氏は日本の親会社側の留意点を解説。インドネシアは、不正の発生等のコンプライアンスリスクが比較的高いため「人手不足になりがちな現地に対して、本社からの危機管理支援を念頭に置くべきです」と述べた。
【講演Ⅱ】
インドネシア新規進出におけるリスクと対処方法
~中小企業が直面する運営課題~
インドネシア進出の中小企業を中心に、レンタル工場とともに、総務、経営、労務面のサポートも提供している豊田通商テクノパーク・インドネシアの永田哲史氏は「中小企業は、経営や内部統制の人的リソースが限られ、リスクが高くなります」と述べ、具体的なリスクや対応策を説明した。労働運動が活発なインドネシアは、労働争議で操業停止になるケースも多く、未然防止には、従業員の声を聞くだけでなく、会社側も考えを発信し、双方向コミュニケーションを図るように求めた。税務では、更正通知が出る前の税務調査段階で状況を確認して対応することや、移転価格の正当性を説明できる資料を本社側が用意することが必要と指摘。地元地域との関係では、地元以外の業者と取引したために反発を受けたケースを紹介し、注意を促した。同社は、各企業に労務アセスメントや、税務申告のチェックリストを提供。各種許認可のメンテナンスでは、取得状況や期限、関連法令変更などを一元管理するサポートも行う。永田氏は「インドネシアで仕事をさせてもらっているという意識を持ち、長期視点で事業を行うことが大事です」と訴えた。