インドネシア外資法改正に伴う投資促進への期待と留意点

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ASEANでは最大、世界4位の人口約2億5500万を擁するインドネシアは、外資規制緩和を進めるなど、海外投資の受け入れ環境整備を急いでいる。6月に福岡、名古屋、東京の3カ所で開かれた「グローバル経営支援セミナー インドネシア編」では、法令、経済などさまざまな角度から、インドネシア投資のチャンスやリスクについて検討した。
※2015 年 インドネシア政府統計
[共催]三菱東京UFJ銀行/インドネシア投資調整庁(BKPM)/東洋経済新報社
[協賛]森・濱田松本法律事務所

【オープニングスピーチ】

三菱東京UFJ銀行
副頭取
守村 卓

三菱東京UFJ銀行の守村卓氏は、人口ボーナス期が続き、中間層の厚みが増すインドネシアにおける、生産基地と消費市場の両面の魅力を指摘。「有望な投資先として注目されるインドネシアへの理解を深めていただければ」と来場者に語りかけた。

【来賓あいさつ】

駐日インドネシア共和国
特命全権大使
ユスロン・イーザ・マヘンドラ

駐日インドネシア大使のマヘンドラ氏は、世界経済減速の中でも、港湾や鉄道網などのロジスティクス基盤と、発電能力増強に向けたインフラ整備に「本気で一生懸命に取り組む」と、強調した。2016年第1四半期の日本からの投資額は16億ドルで、15年の年間28.7億ドルを上回るペースで推移している。マヘンドラ氏は「インドネシアは皆さんの生産拠点、国際市場への輸出拠点としてベストチョイスになると信じます」と投資を呼びかけた。

【基調講演Ⅰ】
新投資ネガティブリストをはじめとした最新のインドネシア投資法令

インドネシア共和国
投資調整庁(BKPM)長官
フランキー・シバラニ

インドネシア投資調整庁のフランキー長官は、開放性と競争力を掲げるジョコ大統領の経済改革に沿って16年5月に出された新投資ガイドライン(ネガティブリスト)の改正点を説明した。外資100%開放、もしくは50%超のマジョリティ出資が認められた分野が増えたほか、地方政府や他省庁がガイドラインに反するルールを打ち出すことを禁じるなど、投資家保護を強化した。具体的には、製造と関連するディストリビューターや冷凍冷蔵倉庫業、製薬原材料、現地中小企業とのパートナーシップを条件にしたeコマース、販売面積2000平方メートル超のデパート事業で外資100%を認めた。地熱発電や映画産業、職業訓練事業、観光業でも、外資比率の限度を緩和。経済政策パッケージでは、経済成長率とインフレ率を基に最低賃金を算定する計算式を定め、労働コストの伸びを予見可能にした。さらに、同庁はワンストップサービスや投資許認可3時間サービスなど利便性向上にも注力している。フランキー長官は「政府は引き続き改革・改善を進めます。日本からの投資は非常に貴重と考えており、ぜひ進出いただきたい」と訴えた。

【基調講演Ⅱ】
インドネシア経済の現状と展望

三菱東京UFJ銀行
執行役員ジャカルタ支店長
勝田 祐輔

三菱東京UFJ銀行ジャカルタ支店長の勝田祐輔氏は、インドネシア経済の現状と見通し、課題を説明した。資源ブーム等に支えられたインドネシア経済は、2007年ごろから09年を除き、6%以上の高成長を続けてきた。しかし、資源価格下落を受け、15年には成長率4.8%に低下した。一方で、個人消費は安定的に推移しており、勝田氏は「このところは、成長率低下に歯止めがかかりつつあります」と分析した。同国経済は、資源輸出低迷で続く経常赤字が課題で「経常収支黒字化には国内工業力強化による産業構造の転換が必要」と指摘。資本収支は黒字になっているものの、直接投資より足の速い証券投資に大きく依存しており、通貨ルピアは変動が激しくなっているため「為替リスク管理は事業上のポイント」と強調した。現在のジョコ政権は、懸案だったガソリン補助金の改革・撤廃を断行。インフラ投資を拡大する予算編成と規制緩和等により、経済政策は望ましい方向に向かっている。今後について、勝田氏は「資源価格に左右されない持続的な成長に向け、インフラ整備が進展し、かつインフラ建設自体の総需要押し上げ効果も期待される」と見通した。

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