人材戦略コンサルティング第一本部
シニアマネジャー 田中敏志
大手製造業にて新製品開発の職を経て、2000年にトーマツ イノベーション株式会社の前身であるトーマツ環境品質研究所に入社。以来300社以上のコンサルティング、1000回以上の研修講師に携わる。現在、Biz CAMPUSのコンテンツ開発の責任者としてコンテンツ開発、研修講師育成に取り組んでいる。

まず前提として、人材育成に成功する経営者は、従業員の教育を人事・総務部門や営業部門などの現場任せにせず、自分が取り組むべきテーマとして積極的にかかわっていることが挙げられます。「よろしく頼む」「ちゃんとやっておけ」というだけでは、成果が出ないことを知っているからです。
たとえばOJT(On the Job Training)一つとってみても、「何を、どう指導すべきか」が明確になっていないと、OJT担当者(教える側)が代わるだけで教育の質が大きく変化してしまいます。特に、管理職といってもプレイイングマネジャーが多くなっている昨今では、OJTとは名ばかりの、「ひとまず連れて歩く」だけのものになりかねません。
そうならないためにも、経営者自らが人材育成の内容に関心を持つことが大切なのです。

人材育成に成功する経営者は、「人材育成とは、会社が将来どのように成長したいのかというビジョンを示し、そのために、従業員が『今、何をすべきか』という行動を起こせる状態に持っていくものである」と考えています。そのために不足しているものがあれば、研修などで補うわけです。
このような経営者はやみくもに「何でもいいから研修を受けろ」といったことは言いません。2年後、5年後、さらには10年後といったように、自社の成長ビジョンを描きながら、「いつまでに、誰に、どのように成長してほしいか、そのためにどんな研修が必要か」を考えます。
人事部門の方は場当たり的ではなく、体系立てた教育制度を整備できるようになります。従業員からすると、経営者から将来を期待されていることが伝えられるので、スキルアップすべき内容が明確になります。

前のポイントにも関連しますが、「人材育成=自社のビジョンの具現化」と考えると、短期的な成果を求めるのは間違いであることがわかります。10年先のビジョンを実現する人材は、学習塾の夏期講習のように「短期集中」では育たないからです。
中堅中小企業の経営者の中には、若手社員だけでなく経営幹部候補が育たない、経営的な考え方ができる人材が少ないと嘆く人が少なくありません。
しかし、中長期的な視野で人材育成をとらえている経営者は、経営幹部候補は一朝一夕ではなく、毎年の継続的な働きかけや人材育成からしか生まれないことを知っています。従業員の5年後の成長を語れる経営者は頼もしいですね。

人材育成に成功する経営者は、「人材育成を自分の仕事だと考えている」と紹介しました。と言っても、すべてを経営者が一人でやるわけではありません。
経営者は、人材育成が経営計画の実現にとって重要であることを社内にコミットするとともに、人事部門などと一緒になりながら、営業部門など現場の理解と協力を得るように促します。
人材育成に成功している企業では、「人事部門=コストセンター」ではなく、重要な戦略部門として経営者が評価しています。
「当社は人材育成に力を入れている企業である」という風土を全社的に醸成することが大切です。

ここまで、人材育成に成功する経営者の考え方の4つの特徴を紹介しましたが、経営資源に限りがある中堅中小企業では、これらの実現も容易ではありません。必要に応じて外部のコンサルタントや研修サービス会社なども利用すべきでしょう。
理想的なのは、最初はこれらの外部リソースを活用しながらも、最終的には自分たちだけでPDCAを回す「仕組み」を作ることです。ひとたびこの好循環ができあがると、経営者や人事部門の負担も軽減することができます。
