聞く・読む・話す・書く
「4技能測定のスタンダード」へ
TOEICテストは10年ぶりの改革で「何が」かわったのか
より"実際的"な出題形式を採用
全体の構成や内容の理解を重視
今回の『アップデート』。どのように出題形式が変更されたのだろうか。
「大きなコンセプトとして、よりオーセンティック(authentic:実際的)な出題形式が採用されています。また、時代の変化に対応するべく、日常生活やビジネスの場面で今日使われている英語を反映しています」と山下常務理事は説明する。
たとえばリスニングセクションでは、これまで1人のスピーチや2人の会話だったが、今回からは3名で会話する設問が加わった。また、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などインターネットによるコミュニケーションツールの発達に合わせ、リーディングセクションでは、テキストメッセージやインスタントメッセージ(チャット)、オンラインチャット形式で複数名がやりとりを行う設問も加えられている。
◎リーディングセクションでの問題例
(リアルなチャット形式の出題。内容も流れの中で理解することが求められる問題となっている)
READING SECTION Part 7 読解問題
SAM BACH 11:59
My first flight was delayed, so I missed my connection in Beijing.SAM BACH 12:00
So now, I’m going to be on a flight arriving in Kansai at 18:00.AKIRA OTANI 12:05
OK. Same airline?SAM BACH 12:06
It’s still Fly Right Airlines. It will be later in the day but still in time for our client meeting.AKIRA OTANI 12:06
I’ll confirm the arrival time. Do you have any checked bags?SAM BACH 12:10
I do. Would you mind meeting me at the door after I go through customs?AKIRA OTANI 12:15
Sure thing. Parking spots can be hard to find, but now I’ll have extra time to drive around and look.SAM BACH 12:16
Yes, sorry about that. See you then!設問1. What is suggested about Mr. BACH?
(A) He has been to Kansai more than ones.(B) He currently works in Beijing.
(C) He is on a business trip.
(D) He works for Fly Right Airlines.
設問2. At 12:15, what does Mr. Otani mean when he writes,”Sure thing”?
(A) He has confirmed the arrival time of flight.(B) He is certain he will be able to find a parking place.
(C) He agrees to wait at the door near the customs area.
(D) He know Mr. Bach must pass through customs.
このほか、リーディングセクションでは3つの関連する文書(トリプルパッセージ)を読んで解答する設問なども登場している。
「これらはいずれも、全体の構成や内容を理解していないと解答できない問題が増えています。小手先のテクニックだけでは通じなくなるでしょう。変更により難易度が上がったと感じる方がいるかもしれませんが、私たちはテストを開発する米国のETS(Educational Testing Service)と何度も議論を重ね、難易度に変化が生じないよう要望してきました」(山下常務理事)
そのため、ETSではテスト開発の専門家が何度も調査、検証を行った上でテストを設計した。実際に、5月29日(日)に実施された、変更後初の公開テストの結果は、これまでのものと同等の平均スコアだったという。受験者の能力に変化がない限り、スコアも一定に保たれることが証明されたわけだ。
英語で「話す・書く」能力を測定
「TOEIC Speaking & Writing Tests」
TOEICテストがスタートした37年前と現在では「国際化」の意味が違う。今、グローバル化の波は、企業規模の大小、業種業態の違いにかかわらず、あらゆる企業へと広がっている。新入社員の採用試験や、異動、昇進・昇格の要件としてTOEIC Programを活用する企業が増えているのもそこに理由がある。英語能力を測る世界共通のモノサシとして、着実に信頼を重ねてきたのだ。

「これからは、異なるバックグラウンドを持つ国の人たちと一緒に仕事をするといったことが当たり前になるでしょう。コミュニケーション力、特に自分の意見を発信する力が重要になります。
TOEICテストは、英語を『聞く(リスニング)』『読む(リーディング)』能力を測定するテストという位置付けでした。英語でコミュニケーションするには『話す(スピーキング)』、『書く(ライティング)』能力も含めた、いわゆる4技能の習得が大切です。TOEIC Programには、英語で『話す』、『書く』能力を測定する『TOEIC Speaking & Writing Tests(TOEIC S&W)』というテストがあります。ぜひご活用いただきたいと願っています」と山下常務理事は語る。
「TOEIC S&W」は「TOEIC L&R」と同様、米ETSが開発したテストで、国際的な職場環境において、効果的に英語でコミュニケーションをするために必要な、話す・書く能力を直接的に測定できるのが大きな特長だ。
「TOEIC S&W」は、「TOEIC Speaking」20分と「TOEIC Writing」60分の2つのテストで構成されており、2007年にスタートした。受験者数は約2万6300人(2015年度)と、TOEIC テストに比べればまだ少ないが、5年連続で増加しており、受験者からは「Speakingの20分間はとても楽しいものだった」という感想も出るほど、その内容は評価が高い。
「人と企業の国際化の推進」に貢献する
さまざまな取り組みをさらに推進
「英語によるコミュニケーション能力を習得するためには、実際に英語を発信する機会を増やすことが大切です。IIBCでは、これを応援するために、さまざまな活動にも力を入れています」と山下常務理事は語る。
J-WAVEと共催した「TOEIC ENGLISH CAFE」、日米協会と共催した「Let's Speak & Communicate !」などのイベントも行っている。このほか、高校生のエッセイコンテスト、フィギュアスケートの国際大会への学生ボランティアの派遣の選考協力など、グローバル人材育成の支援も行っている。
「IIBCはこれからも、協会の理念である『人と企業の国際化の推進』に貢献するさまざまな活動を続けていきます」と山下常務理事は力を込める。
その言葉どおり、グローバル化が進む中で、IIBCへの期待はますます大きくなっている。「4技能測定のスタンダード」としての「TOEIC Tests」のブランドも、今後さらに存在感が高まるに違いない。