オフィス特集

ワークスタイル変革がワークプレイスづくりを変える

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開放的なワークスタイルを支えるという観点で、たとえば来客を増やす仕掛けは重要です。実際に、来客数をKPI(重要業績評価指標)の一つとして掲げている企業もあります。来客を増やして、顧客や取引先の持つ知識を獲得したり、一緒に新たな知識を創造したりすることのできるワークプレイスは、今後、さらに注目されていくでしょう。

そして、開放的ワークスタイル支援という観点をさらに推進すると、スポットの来客を増やすだけでなく、外部の人に長時間滞在してもらえるようなワークプレイスの設置という施策に到達するはずです。最近は、大企業に所属しながらも、外部のコワーキングスペースを利用する人が増えてきています。いくつかの企業はすでに、コワーキングスペースを自社オフィス近くに設け、そこを利用する他社社員と自社社員との相互作用を促進しています。企業の境界を飛び越えたコミュニティづくりは、開放的で多様なワークスタイル(図のD)を可能にする有効な手だてとして、今後も取り組む企業が増えることでしょう。

―新しいワークプレイスが経営にもたらす影響について教えてください。

妹尾 問題解決から問題発見へと経営の力点がシフトするのではないかと思います。生産性の向上は多くの企業に共通する主要経営課題です。そして生産性向上の方法は、投入コストを減らすか、産出価値を増やすかの二つに集約されます。ただし、ここで気をつけなくてはならないのは、既存の投入物、既存の産出物にとらわれない、ということです。開放的で多様なワークスタイルを可能にする新しいワークプレイスは、イノベーションの本質である「新結合」を促します。既存の投入物や産出物の量の調整ではなく、新規の投入物や産出物を発見する行為の重要性に気づく機会が増えるでしょう。

また、人材育成にも影響は及ぶでしょう。ある特定職能のスペシャリストを養成するというよりは、複数の視点から物事を見ることのできるゼネラリストの養成に新しいワークプレイスは向いていると思われるからです。

ちょっと違う切り口では、ワークプレイスが経営にもたらす影響とは逆方向の作用かもしれませんが、マネジメント層がワークプレイスを利用して従業員や社会にメッセージを送る頻度も増えるのではないかと思っています。たとえば「我が社では、複数のコミュニティを橋渡しするようなプロデューサー的人材を優遇します」というメッセージの伝達は、口頭や文書で述べるだけでなく、たこつぼ型ワークプレイスを廃して新しいワークプレイスに少なからぬ投資をしたという事実によっても強化されるはずです。

―ワークプレイスづくりも、マネジメント層の大切な役割になっているのですね。

妹尾 はい。かつての「内部×計画」型の方針において、上司の役割は部下が与えた仕事をちゃんとやっているかどうかを監督することでした。しかし、開放的で多様なワークスタイルは、監督されることに馴染みません。イノベーションを起こすためには、与えられた仕事をこなす活動ではなく、他部門や社外の人間を「呼び寄せ」たり、「巻き込ん」だりしながら新しい仕事を作る活動に従事すべきです。こうした活動の足かせになりかねない監督ではなく、活動の基盤となる関係性を構築する「場づくり」こそが上司の役割になっていると考えます。関係性である「場」の創出には、ワークプレイスづくりの要諦である、空間と制度の設計がカギとなります。

ワークプレイスづくりはこれまで社内の一部の部署や担当者だけが関与する傾向にありました。しかし今後は、そこで働く事業部の人たちが自ら積極的に関与していく必要があるでしょう。経営戦略とワークスタイル、ワークプレイスはすべて地続きなのですから。

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