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マーケティング力と顧客目線を備えた人財を 東洋大学

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
東洋大学は、1887年に明治の哲学者・井上円了によって創立された約130年の歴史を持つ総合大学だ。哲学を建学の理念とする唯一の大学であり、近年では駅伝や水泳、陸上などの活躍からスポーツが盛んな大学というイメージも強い。一方で、2014年度には、我が国の高等教育の国際競争力の向上を目的に、世界レベルの教育研究を行うトップ大学や国際化を牽引するグローバル大学を重点支援する、文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援 タイプB(グローバル化牽引型)」に採択され、2017年には新学部・学科の開設を構想するなど、グローバル人財育成の取り組みを加速している。そこで、ここでは 「世界で活躍できる人財の条件」と題し、グローバル社会で活躍するために必要な能力とは何か、どうしたら育てることができるのかを全12回の連載を通して明らかにしていく。
第10回は、1990年代に日本の銀行の不良債権問題の深刻さをいち早く指摘したことで知られる元金融アナリストとして知られ、現在は文化財修復を行う小西美術工藝社社長を務める一方で、観光政策を提言し、『新・観光立国論』などの著書もあるデービッド・アトキンソン氏を招き、元観光庁参事官で観光政策・行政が専門である東洋大学国際地域学部国際観光学科の矢ヶ崎紀子准教授と対談いただいた。

 

小西美術工藝社 代表取締役社長
デービッド・アトキンソン
オックスフォード大学にて日本学を専攻。アンダーセン・コンサルティング、ソロモン・ブラザーズを経て1992年ゴールドマン・サックスのアナリストへ。日本の銀行の不良債権問題をいち早く指摘し、注目を集める。その後、同社マネージングディレクター、パートナーを経て2007年退社。2009年に小西美術工藝社に入社し、2011年から現職

矢ヶ崎 アトキンソンさんが著書『新・観光立国論』でデータに基づいて示された内容は、とても示唆に富み、観光学に関わる多くの教員、学生が関心を寄せています。その中で、昨年、訪日外国人旅行者数は2000万人に迫りましたが、正しい政策を行えば、2030年に8200万人を突破できると主張されています。これは、急速に成長するアジア市場で、高い目標を持ち、戦略を立てて行動すべきだ、という提言と受け取りました。

アトキンソン 2014年に年間訪日外国人旅行者数が1300万人を突破するなど急増を始めた時、日本国内では「日本は世界を魅了している」と言われました。しかし、それをフランスの8400万人超(2013年)と比べてみるとどうでしょう。著書では、根拠のない自画自賛ではなく、あくまでもデータに基づいた議論の枠組みと、設定する目標の実現可能性を示したかったのです。たとえば、中国人観光客の「爆買い」が注目されていますが、日本での中国人1人当たりの観光消費額は23万円で、米国で使う66万円に遠く及びません。アジアから日本に来る観光客は、ちょっと隣の町に行くような感覚で来日するため、旅行への期待値が低く、あまりお金を使わないのです。一方、欧州からの訪日観光客はわずか106万人。高い航空運賃をかけて訪日する欧州の観光客は旅行への期待値が高いはずなのに、日本はそうした顧客を引き付けることができていません。少子化による人口減で市場が縮小する今後の日本は、マーケティングを活用したデータに基づいて顧客満足度を高め、リピーターを増やすとともに、もっと顧客単価を上げる努力をする必要があります。

東洋大学 国際地域学部 国際観光学科 准教授
矢ヶ崎紀子
九州大学大学院 法学府政治学専攻修了。修士(法学)。都市銀行、シンクタンクを経て官民の人事交流制度によって観光庁で勤務した経験も持つ。2014年から現職。研究分野は観光政策と観光産業。国土交通省、観光庁の委員を歴任

矢ヶ崎 日本の観光地は、これまで旅行会社に送客を依存してきた部分が大きいので、外国人旅行者に自分の地域に来てもらうために、どんなマーケティングをすべきかを十分に理解していないところがあると思います。訪日外客誘致においてマーケティング力を磨き、さらに、その力を停滞している国内旅行市場の活性化にも活用していくことが期待されます。

アトキンソン マーケティングはいわば日本産業全体の弱点だと思います。「観光はおもてなしだ」という議論をよく耳にしますが、ホスピタリティと観光に訪れる動機との間に相関関係を示すデータは見当たりません。データに基づく議論も、そのベースになるデータ収集も不十分です。また、観光政策を検討する際に、欧米人、外国人といった安易なくくりの議論に流れがちなところにも、多様性を踏まえたマーケティング視点の欠落を感じます。

矢ヶ崎 一方で、海外の観光行政担当者は、マーケティングを理解している点で、日本との違いがありますね。

アトキンソン マーケティングの他にも、海外と比較して日本の観光分野に足りないのが、プレゼンテーション能力だと思います。文化財の仕事に携わっていると気づくのですが、日本では多くの国宝や重要文化財などがあっても、中身を重視した解説や展示がされておらず、観光素材として生かす環境が整っていません。おもてなしや治安の良さ、正確なダイヤで運行される新幹線などはすばらしいとしても、わざわざそれらを求めて観光客が訪日するわけではありません。観光地を訪れると、どんな楽しみがあるか、どんなことを学べるかを示して素材を磨き上げるとともに、観光客を楽しませる環境整備が必要でしょう。

矢ヶ崎 確かに、日本人の観光旅行は「物見遊山」という言葉に象徴されるように、「見る」観光スタイルが中心でした。見るだけなら一度きりで満足し、その後は再び訪問しません。しかし、観光客のニーズは世界的に「体験する」観光スタイルへと移っています。人口が減る中では、一度きりの訪問で終わらせず、「また来たい」と思ってもらえるリピーターの獲得も必要でしょう。ただ、昔からのやり方を踏襲してきた観光事業者には、そうした課題意識がなかなか浸透していません。そういった意味でも、若い世代の育成、意識向上を図ることが急務だと考えています。

アトキンソン しかしながら、日本の大学の観光学部は、ホテルや旅行会社に就職する人材育成に偏っている印象があります。

矢ヶ崎 おっしゃるとおり、日本の大学の観光学部は発展途上の段階ですが、これからの観光学はマーケティング、経営、文化、環境など、さまざまな分野の専門家を入れてチームを作り、日本の観光について取り組む必要があると考えています。東洋大学の国際観光学科は、教員数を大幅に充実させて、2017年度に国際観光学部として新たにスタートを切る予定です。また、カリキュラムは、ツーリズム、エグセクティブマネジメント、サービスコミュニケーション、観光プロフェッショナルの4コースに分かれて幅広い知識教養や実務能力を身に付ける「観光産業分野」と、地域・国家・世界の視点から観光行政の課題解決と政策具現化能力を身に付ける「観光政策分野」の二つの分野をカバーしています。さらに、多様な人々が知恵を出し合い、観光の期待値・満足度を向上させることができる人財や、国・地方レベルで政策を担える人財を育成する場にしたいと考えています。

アトキンソン これからの観光産業・行政を担う人財を輩出するために、東洋大学には、物事の本質を捉え、論理的に考えながら、より良い方向に変えていくことができる人財を育ててほしいと思います。

矢ヶ崎 国際観光学部で学ぶ学生には、積極的に現場に出て、理論と実際の間を行き来することによって、思考力を鍛えてもらいたいと思っています。このために、東洋大学は、海外の著名な大学をはじめとする機関・企業と連携して、留学プログラムはもちろん、グローバルな実務研修や語学研修等の多彩な機会を提供していきます。現場での経験を通じて、学生はさまざまな気づきを得ますので、それをさらに広げ深める学びを提供することが、国際観光学部の役割です。自分なりに考える力を大事にする東洋大学らしい学生を育てていきたいと思います。

※2017年度開設予定(設置構想中)。学部・学科名は仮称であり、計画内容は変更になる可能性があります。