博報堂アイ・スタジオの「クロスボーダー・デジタル・マーケティング戦略」に迫る

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グローバルビジネス部
チームリーダー プロデューサー
都筑 美香

 だが、各国にスタッフが点在し、言語も多様だと、コミュニケーションをとることに、難しさはないのだろうか。

 「それは、当然、あります」と嶋田氏は続ける。「図面通りにつくればいいプロダクトなどとは異なり、私たちが制作するアウトプットはクリエイティブな要素が少なくありません。日本人同士でも微妙なニュアンスを伝えるのは難しいことが多いのに、バックグラウンドがまったく違う海外のスタッフとメールや画面を見ながらセンシティブなことについてコミュニケーションをとり、考え方や思いを共有するのは本当に難しい。しかし、つねにこちらの言っていることが誤読されていないか、正確に伝わっているかを心に留めながら、辛抱強く、きめ細かにコミュニケーションを続けるしかないのです。日本の仕事の進め方に対して理解を求める一方、現地に近い場所ならではの解決策やアドバイスを提示されることも、一度や二度ではありませんでした」。

 現在、このCSRプロジェクトのリーダー役を務める博報堂アイ・スタジオ グローバルビジネス部チームリーダーの都筑美香氏も口をそろえる。「クロスボーダーのデジタルマーケティングは、まさしくクロスボーダーのスタッフならではの困難な課題に直面することもありますが、クロスボーダーのチームだからこそ、最適な解にたどりつけるという面もあると実感しています」。

経験がグローバルでの
競争力の源泉となる

 クライアントも、博報堂アイ・スタジオのプロデュース力とアウトプットを評価しているようだ。CSRキャンペーンは今年、第3弾目となるプロジェクトの実施に向けて、クロスボーダーのチームが文字どおり国境を越えて奮闘しているところだ。

 昨年は、アカデミック領域と共同でキャンペーン用に新しいIoTの仕掛けを導入した。回を重ねるごとにプロジェクトを彩るコンテンツも高度化しているようだ。プロジェクトにかかわる職種も国籍も広がりを見せているという。もちろん、スタッフのスキルも確実に高まっているという。

 「たとえば、海外のエンジニアも主体的かつ積極的に動くようになってきました。もっと、こうしたら面白くなる、こんな工夫がキャンペーンの成果を高めるといったアイデアが飛び交うようになったとも言えるでしょう。日本サイドのスタッフも、広く海外の現地の暮らしや習慣などに目を向けるようになりました」と都筑氏。「会社自体、クロスボーダーの案件は部署や職種を越えて取り組んでいこうという姿勢をはっきりさせるようになりました。この間に得た経験値は大きい」と嶋田氏も手応えを感じている。

 グローバル化が進み、コーポレートコミュニケーションの主軸は今、明らかに日本からグローバルへ、そしてデジタルへとシフトしつつある。その中で企業が展開するクロスボーダーのマーケティングプロジェクトを全力でサポートするため、博報堂アイ・スタジオは社内体制の強化にも取り組んでいる。すでに東京の本社にも、タイ、インドネシア、中国、韓国、ベトナム、米国、カナダ、オーストラリアなどさまざまな国々のスタッフが在籍し、日本人社員とダイバーシティに富んだチームを編成し先進的な仕事に挑んでいる。

 クロスボーダーのデジタルマーケティング戦略の起点が、ここにある。

東京の本社には、タイ、インドネシア、中国、韓国、ベトナム、米国、カナダ、オーストラリアなどさまざまな国々のスタッフが在籍し、ダイバーシティに富んだチームでクロスボーダーなプロジェクトを進行させている