東洋経済オンラインとは

博報堂アイ・スタジオの「クロスボーダー・デジタル・マーケティング戦略」に迫る

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
企業のグローバル化が加速する中、国内外のリソースを統合的に結び付ける「クロスボーダー」という視点でのデジタルマーケティングが企業の課題として浮上している。クロスボーダーのデジタルマーケティングを成功させるためには、国をまたいだプロジェクトチームの構築、デジタル技術やマーケティングに精通したプロ人材、それらをマネジメントできるディレクターなどが必要になるからだ。博報堂アイ・スタジオの取り組みから、クロスボーダー・デジタル・マーケティングの今を追う。

ASEANで展開する
CSRキャンペーンで実力を発揮

執行役員
グローバルビジネス本部長
嶋田 仁

 2014年5月、博報堂アイ・スタジオの執行役員・グローバルビジネス本部長の嶋田仁氏は、これまでにはない達成感を感じていた。それも無理のないことだった。日本のメーカーがASEANで展開するWeb上のCSRキャンペーンがオンスケジュールで公開されたからだ。

 このとき、嶋田氏は東京の本社にいた。現場を仕切るプロデューサーとデザイナーはバンコクに、コーダーはベトナムにいた。電話やメール、ネットのテレビ会議などで頻繁にやり取りし、一つひとつの課題を克服しながら最適解を紡ぎ出していく。何よりも、日本国内だけの議論では思いつかないようなアイデアと出合う醍醐味もある。

 時計の針を戻そう。

 ASEAN域内でCSRのキャンペーンをWeb中心に行いたいというメーカーのプロジェクトが、Web制作を中心に、マルチタッチポイントでの統合的なデジタルマーケティングを強みとする博報堂アイ・スタジオに持ち込まれたのは、2013年末のことであった。嶋田氏らはそれ以前にも、海外で展開するデジタルマーケティングなどを手掛けて成功させてきた経験を持っており、その実績が評価されての受注であった。しかし、それまでは企画から実際の制作まで国内のスタッフを中心に完結させていたが、このときは可能な限りASEAN各国のスタッフも入れてチームを組むというチャレンジを選択した。ASEANとひとくくりにしても、当然、文化や習慣はそれぞれの国ごとに異なる。まして、法や制度そのものにも違いがあるはずだ。現地の人々の心に届くキャンペーンをしようとすれば、制作サイドにも現地の事情に精通したスタッフが入っているほうがいいと考えるのは、自然な流れだ。

 プロジェクトの概要を受けて、嶋田氏はすぐチームの編成に動いた。

 博報堂アイ・スタジオは、東南アジアにも日本から社員を送り込んでいる。プロジェクトのディレクションはバンコク駐在の日本人スタッフが担当することにし、デザイナーはタイ、Webサイトのコーディングはベトナムの協力会社に依頼することにした。キャンペーンは、5カ国語で展開するから、それぞれの言語の翻訳作業も必要になる。そのためタイの制作会社のネットワークを通じて、各言語ができるスタッフも探し出した。

デジタルマーケティングの
プロフェッショナル集団として

 博報堂アイ・スタジオが提供する統合デジタルマーケティングは国内だけにとどまらない。インバウンド観光客への対応はもとより、日系企業の中国、ASEANなどでの事業展開のサポートといったアウトバウンド支援までを一貫してサポートしている。同社は、博報堂グループの一員であると同時に、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)グループの一員でもある。そのため両グループの広範なネットワークを活用できる強みがある。事実、デジタルマーケティングの分野では、DACと共に中国や東南アジアで制作会社を運営してもいる。両グループとの間でスタッフの交流もある。そうしたことを背景にデジタルマーケティングのプランニングから制作、実装までトータルに手掛ける力を持つプロフェッショナル集団として、業界やクライアントから高く評価されている。

 「グローバル化が進んだことで企業活動のクロスボーダー化も進み、デジタルマーケティングの分野でもクロスボーダーマーケティングが必須のものとなりつつあります。しかし成功へ導くためには、マーケティングやデジタル技術などそれぞれのプロフェッショナルが必要ですし、ダイバーシティに対するリテラシーが高い人材が対応しないとうまくいかないこともあります。私どもは、それだけのチームを編成できるネットワークと経験を有していると自負しています」(嶋田氏)

グローバルビジネス部
チームリーダー プロデューサー
都筑 美香

 だが、各国にスタッフが点在し、言語も多様だと、コミュニケーションをとることに、難しさはないのだろうか。

 「それは、当然、あります」と嶋田氏は続ける。「図面通りにつくればいいプロダクトなどとは異なり、私たちが制作するアウトプットはクリエイティブな要素が少なくありません。日本人同士でも微妙なニュアンスを伝えるのは難しいことが多いのに、バックグラウンドがまったく違う海外のスタッフとメールや画面を見ながらセンシティブなことについてコミュニケーションをとり、考え方や思いを共有するのは本当に難しい。しかし、つねにこちらの言っていることが誤読されていないか、正確に伝わっているかを心に留めながら、辛抱強く、きめ細かにコミュニケーションを続けるしかないのです。日本の仕事の進め方に対して理解を求める一方、現地に近い場所ならではの解決策やアドバイスを提示されることも、一度や二度ではありませんでした」。

 現在、このCSRプロジェクトのリーダー役を務める博報堂アイ・スタジオ グローバルビジネス部チームリーダーの都筑美香氏も口をそろえる。「クロスボーダーのデジタルマーケティングは、まさしくクロスボーダーのスタッフならではの困難な課題に直面することもありますが、クロスボーダーのチームだからこそ、最適な解にたどりつけるという面もあると実感しています」。

経験がグローバルでの
競争力の源泉となる

 クライアントも、博報堂アイ・スタジオのプロデュース力とアウトプットを評価しているようだ。CSRキャンペーンは今年、第3弾目となるプロジェクトの実施に向けて、クロスボーダーのチームが文字どおり国境を越えて奮闘しているところだ。

 昨年は、アカデミック領域と共同でキャンペーン用に新しいIoTの仕掛けを導入した。回を重ねるごとにプロジェクトを彩るコンテンツも高度化しているようだ。プロジェクトにかかわる職種も国籍も広がりを見せているという。もちろん、スタッフのスキルも確実に高まっているという。

 「たとえば、海外のエンジニアも主体的かつ積極的に動くようになってきました。もっと、こうしたら面白くなる、こんな工夫がキャンペーンの成果を高めるといったアイデアが飛び交うようになったとも言えるでしょう。日本サイドのスタッフも、広く海外の現地の暮らしや習慣などに目を向けるようになりました」と都筑氏。「会社自体、クロスボーダーの案件は部署や職種を越えて取り組んでいこうという姿勢をはっきりさせるようになりました。この間に得た経験値は大きい」と嶋田氏も手応えを感じている。

 グローバル化が進み、コーポレートコミュニケーションの主軸は今、明らかに日本からグローバルへ、そしてデジタルへとシフトしつつある。その中で企業が展開するクロスボーダーのマーケティングプロジェクトを全力でサポートするため、博報堂アイ・スタジオは社内体制の強化にも取り組んでいる。すでに東京の本社にも、タイ、インドネシア、中国、韓国、ベトナム、米国、カナダ、オーストラリアなどさまざまな国々のスタッフが在籍し、日本人社員とダイバーシティに富んだチームを編成し先進的な仕事に挑んでいる。

 クロスボーダーのデジタルマーケティング戦略の起点が、ここにある。

東京の本社には、タイ、インドネシア、中国、韓国、ベトナム、米国、カナダ、オーストラリアなどさまざまな国々のスタッフが在籍し、ダイバーシティに富んだチームでクロスボーダーなプロジェクトを進行させている