自文化に誇りを持ち、異文化に垣根をなくす 東洋大学

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石田 アメリカもフランスも多民族・多人種国家で、多様な文化を受け入れてきた歴史があり、日本文化や日本酒も受け入れられやすい土壌があるのでしょう。一方で、自文化を発信するためには、異なる文化的背景を持つ人々の理解をいかにして得るか、という課題に取り組む必要があります。私の専門は近現代の日本文学であり、ここ数年は戦争文学を授業で取り上げてきました。日本人の学生は、戦前・戦中の時代のことをきちんと考える機会を多く与えられてこなかった傾向にありますが、その時代背景を知らなければ、そこに連なる日本の近現代の歴史と文学は理解できません。日本の良い面、悪い面を踏まえて、自分なりに考え、本質を追求しながら、多面的に理解することが、本当の知識につながると考えています。

桜井 同様に、日本酒を海外で売ろうとする場合も、まずはその国の文化を理解しなければなりません。また、外国人に理解してもらえるよう説明するために、改めて商品を見つめ直すことで、自分たちの理解も深まり、それが商品にフィードバックされて、結果として品質向上につながります。さらに、企業として永続的に活動し成長し続けるためには、たとえばフランスであれば、フランス人と真っ向から付き合い、信頼を得ることが必要です。このように、自文化に対して誇りを持ち、異文化に対して垣根を作らず、対話する中で相互理解を深められる人財こそが、今後は求められると実感しています。

石田 自文化、異文化の両方を知り、相互理解の中で情報発信していくことができる、そのようなグローバル人財の育成については、それにふさわしい教育基盤を整備することが大切だと考えています。2017年に新設予定の国際文化コミュニケーション学科では、徹底的な語学教育を行いますが、語学スキルを身に付けるだけでなく、コミュニケーションの本質である多文化理解も非常に重視しているため、1学年の定員の15%程度は外国人留学生を受け入れ、ダイバーシティのある環境を実現したいと考えています。

桜井 当社も、毎年1~2人のフランス人留学生を3カ月から1年程度の研修で受け入れています。山口県の山あいの田舎で、フランス人はもとより外国人など一人もいないような町でも、きちんと自分自身の意志、目的を持って生活する彼らのメンタルの強さには感心させられます。海外で活躍するためには、異文化の中に置かれても崩れない、しっかりした根っこを持つことが大切だと思います。

石田 物事の本質、自己を見つめる力を身に付けることが、自分なりの根っこになるでしょう。学生時代には、そのようなさまざまな環境の中で適応する力を養い、生き抜く力を身に付けてもらいたいと思っています。日本文学・文化に限らず、新設予定の学科には、フランス文学、ドイツ文学、英文学、英語学、日本語教育など多彩な専門を持つ教員がそろっています。学生は語学スキルを磨きつつ、興味のある分野を選び、学びや研究を通して得られるものを、自分なりに掘り下げることができるカリキュラムになっています。

桜井 学生時代にそのような教育環境で学んだ経験は、将来、必ず励みになり、武器になるでしょう。当社の酒蔵も、研究者が入社し、近年、技術や知識のレベルが上がってきましたが、技術や知識を「知っている」だけではなく、それを「何に」「どのように使うのか」まで考えられることが重要だと思っています。そのような自分なりの視点や価値観を持った、根っこのしっかりした人財が東洋大学から育つことを期待しています。

石田 東洋大学の創立者、井上円了は「諸学の基礎は哲学にあり」として、物事の本質を見極めることの大切さを説いています。その建学の理念を大切にしながら、自分の力で生き抜く力を身に付け、国際社会の中で真にコミュニケーション能力を発揮できる人財を育成していきたいと思います。

※2017年度開設予定(設置構想中)。学部・学科名は仮称であり、計画内容は変更になる可能性があります。