第三者の評価機関として
「わかりやすさ」を追求
消費増税や社会保障費の負担拡大に加え、公的年金への不安などから、金融商品に関心を持つ人が増えている。政府の「貯蓄から投資へ」という掛け声のもと、さまざまな施策が進行中だ。今年1月からは、未成年者(0~19歳)を対象に、年間80万円分の投資枠から得られた譲渡益、分配金・配当金に対して、税金が非課税になる「ジュニアNISA(少額投資非課税制度)」も始まった。
1966年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事。95年、米国イリノイ大学経営学修士号(MBA)を取得し、同年ソフトバンク入社。98年、モーニングスター株式会社設立に参画し、04年より現職
著書:『(新版)投資信託選びでいちばん知りたいこと』(ダイヤモンド社)、『お金持ち入門』(共著・実業之日本社)、『図解 はじめての投資信託』(学研パブリッシング)など
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tomoyaasakura
施策が充実する一方で、投資初心者の「どれを選べばいいかわからない」という声も聞えてくる。投資信託協会のデータによれば、販売されている公募投資信託の数は5819本(2015年10月末現在)あるが、この数は上場会社数3510社(15年12月22日現在)と比べてもはるかに多い。
モーニングスターの朝倉智也社長は、「当社は創業以来、金融機関と個人投資家の情報格差を埋め、第三者の立場でわかりやすく公正な情報を提供することに努めてきました。ファンドを星の数で評価する『モーニングスターレーティング』や、優れたファンドを評価する『ファンド オブ ザ イヤー』などを実施しているのもその一環です」と話す。
金融庁の「金融・資本市場活性化有識者会合」は、「市場の活性化のためには、第三者の立場から評価、格付けなどを行う評価会社の積極的な活用が期待される」とし、モーニングスターのような評価サービスを歓迎している。
ファンドを星の数で評価
「スターレーティング」
モーニングスターの画期的な取り組みの一つが、ホテルやレストランの五つ星のように、ファンドを星の数で評価する「モーニングスターレーティング」だ。朝倉社長はこのレーティングの考え方について「ファンドの運用成績はリターンだけでなく、リスクの大きさを考慮することが不可欠です」と説明する。
モーニングスターのHPでは、ファンド名のすぐ横に星の数が示され、一目でレーティングがわかるようになっている
そのため、同社の「モーニングスターレーティング」では、「シャープレシオ」と呼ばれる数値を用いている。これは、リターンのブレの大きさ(標準偏差)を利用し、リスクに見合ったリターンを得ているかを表す指標だ。「モーニングスターカテゴリー」と呼ばれる分類で同じタイプのファンドを比較する仕組みや、直近のリターンだけでなく3年間、5年間、10年間の運用成績を重視する姿勢も同社ならではだ。
簡単に言えば、星の数が多いほど、同分類のファンドの中でリスクとリターンの両方を考慮した運用成績が良いファンドとなる。だが国内市場においては運用成績が良ければ資金が集まるのかと言えば、そう単純ではなかった。
「米国では、運用実績が良く米国モーニングスターの評価の高いファンドほど資金が集まりますが、日本では組成されたばかりの目新しいファンドやテーマ型ファンド、毎月分配金が多く受け取れるファンドに人気が集まりがちでした。しかし、投資家、販売会社ともに第三者評価に対する意識が高まり、ここ最近では当社の評価の高いファンドに資金が流入する傾向が見られます(図表参照)。日本の個人投資家にも、中長期に保有できるファンドを探すという視点を持っていただけると良いですね」(朝倉社長)
2016年1月28日には17回目となるファンド オブ ザ イヤーを発表。受賞ファンドに注目が集まっている
そして、評価の高いファンドを選ぶうえでもう一つ参考になるのが、同社の「ファンド オブ ザ イヤー」であろう。同賞では、ファンドの評価にあたっては、パフォーマンスなど定量的な面だけでなく、定性的な面も評価する必要があるとして、運用会社の運用方針や運用戦略、運用プロセスやリスク管理体制、情報開示の状況なども含め、総合的に評価する。同賞は99年に第1回目を発表し、今年で17回目になる。一昨年は10年以上の長期間にわたり優れた運用実績を残したファンドを表彰する「ファンド オブ ザ ディケード」も発表している。
資金流入量にも影響大
投資家も気にする受賞ファンド
「『ファンド オブ ザ イヤー』を受賞したファンドの資金流入額が増えています」(朝倉社長)という言葉を裏付ける興味深いデータがある。
15年4月時点のファンドの総数4062本の資金流入額は計約4000億円だったが、同年1月末に「ファンド オブ ザ イヤー」を受賞した41本のファンドがそのうち約2500億円を占めているのだ。シェアも同年1月の23.5%から4月に62.8%へ大幅増となり、これは1月末の発表をきっかけに資金が流入したと考えられる。つまり、投資家も「ファンド オブ ザ イヤー受賞ファンド」は〝買い〟と判断したということだ。
「ファンド オブ ザ イヤー」の信頼醸成と並行して、モーニングスター自身の業績も伸びている。15年度の上半期連結営業利益、連結経常利益は、前年同期比35%を超える6年連続の増益、4年連続の最高益の更新となった。当期利益も42%の大幅増益(6年連続)と最高益を更新している。
「近年、当社に対する信頼が高まっていると自負していますが、一方で公正な情報提供を行う評価機関としての責任もますます大きくなっていると感じています。引き続き、当社の企業理念である『投資家主権の確立』を実現する取り組みをこれからも愚直に続けていきます」と、朝倉社長は気を引き締める。
モーニングスターでは、タブレットやスマートフォンなどのデバイス、さらにはSNSなどに対応したIT関連サービスも率先して取り組み、販売金融機関が個人投資家により良い提案が行えるように情報提供している。「貯蓄から投資へ」という流れとともに、モーニングスターの存在意義もますます高まるだろう。
