日本アンガーマネジメント協会

怒りと上手に付き合うための心理トレーニング

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導入企業増加の背景として、価値観の多様化が挙げられる。たとえば、私たちは「~すべきである」「~すべきでない」という自分の価値観に対立する言動と遭遇した時、怒りの感情が起きやすい。一方、グローバル化が進み、ダイバーシティを推進する企業が多くなっているため、自分とは異なる文化的背景や価値観を持つ人間と仕事をしたり付き合ったりする機会が多くなった。ビジネス環境もすさまじいスピードで変容している。すると、さまざまな「べき」がぶつかることにもつながるということだ。

導入企業の実例
野村證券

9割以上の参加者が評価したアンガーマネジメント研修

野村證券
人権啓発室長
前田 暁史

野村證券は昨年、約1万3000名の全社員を対象にしたアンガーマネジメント研修を行った。その目的について研修を企画した同社人権啓発室の前田暁史室長はこう説明する。

「社員を対象にした人権研修は毎年行っているのですが、日常の言動を反省するという切り口のアンガーマネジメントは効果が期待できましたし、『機嫌で怒らずルールで怒る』『怒りの連鎖を断ち切ろう』という日本アンガーマネジメント協会の考えにも共感することが多くありました。『お互いのべきを許容する、あるいは許容範囲を広げる』ことはコミュニケーションの根本ではないでしょうか」 狙いは、当たった。研修後のアンケートでは参加者の9割以上が「参考になった」と回答。この機に、理解をより深めていくことが大切と考え、同社は今年もアンガーマネジメント研修を継続して行うことを決めた。

「プログラムの作成にあたり、私どもの要望に協会は柔軟に対応していただきました。何よりも、皆がそれぞれにさまざまな感情をコントロールすることが、働きやすい職場づくりにもつながると期待しています」と、前田氏は大きな手ごたえを感じているようであった。

もはや怒りのコントロールは
経営上の重要課題だ

だが、怒りの感情をコントロールできないと、コミュニケーションに支障をきたす。パワハラも起きやすくなるだろう。職場がぎすぎすした雰囲気になれば、士気やモチベーションに悪影響を及ぼし、生産性の低下にもつながる。働きやすい職場作り、あるいはメンタルヘルスという面からも、従業員が怒りの感情をコントロールできるようにすることが大きな意味を持つことに、多くの企業が気づき始めたとも言えるだろう。

「たとえばある介護施設では、アンガーマネジメントを導入したことで、職員がイライラとした感情のコントロールを意識するようになり、利用者とのコミュニケーションが円滑になったと聞きました。その結果、職員のストレスが軽減し、離職率まで低下したということです」と安藤氏は紹介する。

こうしたストレスマネジメントという視点からも、その対策の一つとしてアンガーマネジメントが注目され始めているのだ。ストレスチェックが義務化され、何とかしなければと対策を模索する企業が増えている。そうした課題が、受講者数の推移に反映されているのだろう。

もちろんアンガーマネジメントの研修は、専門家の協力がなければできない。日本アンガーマネジメント協会の養成講座を受講し、アンガーマネジメントファシリテーター(FT)の資格を取得した人は約1400名。アンガーマネジメントは教育分野でも注目されており、子供を対象に教えるアンガーマネジメントキッズインストラクター(KI)の有資格者も約1600名いる。FTもKIも全国にいるので、協会を通せば地方での研修も可能だ。

感情的に怒りを爆発させたら、相手だけでなく自分も傷つけてしまう。一方で怒りを我慢し、ため込み続けるとメンタルの不調を引き起こしかねない。経営上の重要な課題として、マネジメント層は従業員の怒りのマネジメントを考える時期に来ているのではないだろうか。

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