社員もパートも幸せな「持たざる経営」の秘密 世界トップを走る中小企業には総務部がない

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多くの社員が楽しみにしているのが年1回の社員旅行だ。パート社員の中には子育て中の女性も多いため、18時には必ず帰社する日帰りのバス旅行だが、プロジェクトチームが組まれて念入りに企画を立てる。参加率は毎回95%以上。社員旅行に予算の上限はない。「日帰りバス旅行でも200~300万円かかる。でも構わない。新しいことならやれと言っている。社内のチームワークの源になるならカネをかけてもいい」(松橋社長)。

SNSでファン3万人を獲得

入社1年目の社員がわずか8カ月で全商品のカタログを作った。入社2年目と4年目の社員が2人でタイに乗り込んで数多くの顧客を獲得した。大学ベンチャーがさじを投げたものを入社1年目の社員が製品化させた……。メトロールでは、若手社員のこんな武勇伝は枚挙にいとまがない。

フェイスブックで自らページを開設し、わずか1年足らずで世界中から3万人ものファンを集めたのは入社2年目の女性社員だった。そこでフォトコンテストを企画するなどしてユーザー同士の交流に火をつけ、いまやフェイスブックは海外受注の重要な窓口にもなっている。

若手だけではない。2013年に発売した空圧式センサーを開発したのは80代の現役エンジニア。20代の若手エンジニアと議論しながら作り上げたという。「年齢も性別も関係ない。とにかく世の中の役に立つ、世の中にないような製品を作っていくという目的の下で一人ひとりが自律して働いている」と松橋社長は胸を張る。

在庫を持たない。管理部門も持たない。オフィスも工場も賃貸で資産総額に占める流動資産は約7割。「身軽でいれば環境に合わせてどうにでも変えられるし、新しいものをどんどん生み出せる」(松橋社長)という考えから推進しているメトロールの「持たざる経営」。だが、それを支えているのは性別や年齢、雇用形態にかかわらずのびのびと働く従業員の力にほかならない。

堀越 千代 東洋経済 記者

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ほりこし ちよ / Chiyo Horikoshi

1976年生まれ。2006年に東洋経済新報社入社。08年より『週刊東洋経済』編集部で、流通、医療・介護、自己啓発など幅広い分野の特集を担当してきた。14年10月より新事業開発の専任となり、16年7月に新媒体『ハレタル』をオープン。Webサイト、イベント、コンセプトマガジンを通して、子育て中の女性に向けた情報を発信している

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