【産業天気図・電子部品】円高・米景気減速のリスク台頭だが「晴れ」を維持

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電子部品業界は夏場以降、円高や世界経済の減速懸念などリスク要因(雲)が台頭してきたとはいえ、依然として全般の増益基調に変わりはない。08年度前半にかけ「晴れ」が続く見込みだ。
 国内主要電子部品メーカーが加盟する電子情報技術産業協会調べの電子部品グローバル出荷額は、2005年3月から直近発表分の今年6月まで28カ月連続の前年同月比プラスを記録している。コンデンサーやスイッチ、小型モーター、電源部品などが特に好調。スイッチが8カ月連続して前年同月比2ケタ以上の伸長を示しているのはゲーム市場の活況によるものと推測される。
 7月に入っても、「パソコン関連中心にセラミックコンデンサーの受注が非常に強い」(村田製作所<6981>)、「HDDモーターは4~6月に客先が在庫を絞ったが、7月以降は急回復し、当社生産台数は四半期ベースで初めて1億台の大台に乗せる見込み」(日本電産<6594>)など、成長加速の手応えがあった。
 その後、8~9月にかけ為替相場が1ドル=120円台前半から115円割れへと一気に円高に傾き、米国でのサブプライムローン(信用力の低い個人向けの住宅融資)問題を契機に世界景気の減速懸念が高まったことで、やや水を差された感はある。実際、1ドル=115円か、それ以上の円安を業績計画の前提としている一部電子部品メーカーの間では、中間決算に向け、想定為替レートの修正(例えば1ドル=110円へ)や業績予想の減額に追い込まれる企業が出てくる可能性がある。ただ、京セラ<6971>やTDK<6762>のように、もともと今期1ドル=110円を前提としている企業もあり、現状程度の為替水準であれば、悪影響は限定的だろう。むしろ警戒すべきは、住宅バブル崩壊後の米国景気がどこまで減速ないし後退し、パソコンや携帯電話、デジタル家電、自動車などの世界需要がどう影響受けるかだろう。
 今のところ、少なくとも08年8月開催の北京五輪までは電子部品の需要増が続くとの見方がコンセンサスとなっている。電気製品の高機能化による一台当たり部品点数の増加や自動車電装化の流れなど、基調的にも事業環境は悪くない。
 『会社四季報』秋号では、電子部品主要メーカーはほぼ揃って今期の増収増益を見込んでいる。前号と比べ利益見通しを増額したのは、コンデンサーが好調の村田製作所や、水晶デバイス拡大の日本電波工業<6779>、任天堂ゲーム機向け部品が伸びているミツミ電機<6767>やホシデン<6804>。磁気ヘッド撤退で減収減益となるアルプス電気<6770>もスイッチなどが好調で、前号予想を増額し減益幅縮小となった。来期についても、やや伸びは落ちるが、軒並み増収増益を見込んでいる。
【中村 稔記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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