東芝、「身内に大甘」3億円賠償請求の疑問点 対象者と金額をどうやって決めたのか

拡大
縮小

報告書による“擁護”はほかにもある。「リーマンショックや東日本大震災などの中、競合他社に打ち勝って、利益向上を図らなければならない厳しい事業環境だった」と、環境悪化も損害額の算定で考慮する余地がある、とわざわざ明記している。

企業統治に詳しい久保利英明弁護士によれば、「最初は50億~100億円くらいで(高めに)請求し、最終的に支払い能力を勘案して1人1億円くらいで落ち着く、というのが通常」と、手厳しい。つまり、初めから落としどころを前提にした訴状ではないのか、というわけだ。

長年にわたる利益カサ上げで改革が遅れた結果、東芝の2016年3月期上期の業績は904億円の営業赤字と、6年ぶりの上期赤字に沈んだ。

旧経営陣の苦しみはこれから

だがこれで幕引きとなったわけではない。

「被告にならなかった役員には、株主代表訴訟を提起することも検討する」と金弁護士は予告する。いくら東芝が逃げても、室町社長を含めた現旧役員に対して、株主が代表訴訟を起こす可能性は残っている。さらには冒頭の巨額の証券訴訟も待ち構える。東芝の評価を貶(おとし)めた旧経営陣の苦しみはこれからだ。

「週刊東洋経済」2015年11月21日号<16日発売>「核心リポート01」を転載)

富田 頌子 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT