豊田章男はなぜ顔の見える経営者になったか

「前に出る男」が体現するトヨタ創業家の本質

東京モーターショー2015のプレスブリーフィングで握手する豊田章男社長とイチロー選手(撮影:鈴木 紳平)

イチロー。日米通算で4213安打(2015年シーズン終了時点)、メジャーリーグ歴代シーズン最多の262安打(2004年)など、日米の野球界双方で数多くの記録を持ち、42歳を迎えてなお現役選手として活躍を続ける。

豊田章男。トヨタ自動車の創業一族である豊田(とよだ)家出身にして、売上高27兆円超、世界販売台数1000万台超(2015年3月期)という世界一の自動車メーカーを率いるトヨタの社長である。フォーブスが11月4日に発表した「世界で最も影響力のある人物73人」のランキングで28位。首相である安倍晋三の41位を上回り、日本人トップの評価を受けている。

イチローと豊田、影響力ある二人が対談

豊田章男社長とイチロー選手の対談は、トヨタグローバルニュースルームやYouTubeに公開されている

分野こそ違うものの、世界にその名前をとどろかせ、各方面に影響を与える――。そんなイチローと豊田の計50分弱にわたる対談を収めた映像が、インターネット上でひっそりと無料公開されているのをご存じだろうか。トヨタが自らのニュースを発信する公式サイト「トヨタグローバルニュースルーム」で11月7日から順次公開され、世界最大の動画サイト「YouTube」にも順次投稿されている。

イチロー「章男社長はものすごい規模の人たちの思いや責任を背負っている。気が休まることなんて絶対ないでしょう?」

豊田章男「背負っているというより、支えられている感じなんですよ。自分自身もつらさを表に出したら、(トヨタ社員をはじめ周囲の)みんなが心配する。だから幸せそうな顔をすることが、みんなの幸せになる」

動画は44分10秒のフルバージョンと番外編(3分9秒)を含む全12本。上記のやり取りは「#3 共通点」のタイトルで公開された動画の一部で、フルバージョンを除き、1本当たり数分の内容だ。今シーズンの終盤に話題となったメジャーリーグ初登板の裏側をイチローが明かしているほか、お互いの共通点や生き方、リーダーシップなどのテーマについて議論を交わしている。11月13日時点では7本目までが公開されており、近日中にすべて配信される。

「トヨタがもっといい車をつくるためには、新しいやり方にチャレンジしなければならない。その第1弾として12月に発売を控えている4代目プリウスでは、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)と呼ぶ、これまでとはまったく違う新しい車づくりを進めてきた。ただ、それをトヨタが自ら言っても共感を得られない。イチローさんに代弁してもらうことで、見る人に価値を感じてもらいたい」。トヨタ幹部は打ち明ける。

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