若者の間に「エセオタク」が激増しているワケ 知識も消費金額も少ないのに、オタクを自称

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③ 作品内容のダイジェストアプリ

エセオタクとオタクとの決定的な差のひとつは、やはり作品の知識量だ。それを補うものとして、アニメやマンガの内容をコンパクトにまとめたアプリが求められるのではないだろうか。このアプリでは、はやっている作品の名場面や名台詞などがガチオタ目線でピックアップされており、そこに玄人っぽい解説も加えられている。要は、それをそのまま知ったかぶり知識として披露できるのだ。時間をかけずに人気作品の情報収集ができ、かつガチオタぶれるというわけである。

原田の総評:オタク要素=コミュニケーションの手段

若者たちのレポートは、いかがでしたでしょうか。

かつてのイメージと違い、今時の若者たちにとって、「オタク」は簡単に自分のキャラをアピールすることができるコミュニケーションツールのひとつになってきている面もあるようです。確かに、本物のオタクになるのにはそれなりの努力と年月がかかるでしょうが、こと若者の間では、簡単に「オタク」と自称できる時代になっているのかもしれません。

ソーシャルメディアの普及により、若者の人間関係が大幅に増え、若者たちがソーシャルメディア上での個性アピールに躍起にならざるをえなくなった結果、「エセオタク」という「オタクキャラ」が増加している――というのが、この「一億総オタク時代」の真相ではないかと考えています。

マーケティング的観点から見ると、確かにかつてのオタクに比べると1人当たりの消費金額は小さくなってきているかもしれないものの、自称オタクの母数は大幅に増大しています。この「ライトなオタク市場」を狙うことは、すべての企業や商品にとってもはや他人事ではなく、むしろ至上命題である、と言っていいのではないでしょうか。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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