英「エコノミスト」が始めた新しいネット戦略 ユーザーの「注目」をネット広告の通貨に

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赤線=ビューアビリティ、青線=1000回表示におけるアクティブビュータイム(能動的な閲覧がされた時間)。ビューアビリティは広告主(Advertizer)ごとにばらつきがあり、ビューアビリティが高ければ、アクティブビュータイムも高いという相関性は見受けられない。たとえば、Advertizer11のケースでは100%のビューアビリティだが、アクティブビュータイムは65%未満にとどまる。(出典:The Economist Group)

「エコノミスト」は、時間ベース測定の価値を証明しようと、上位20広告主が実施したビューアビリティ基準のキャンペーンにおける、インプレッション1000回あたりの「アクティブ・ビュー・タイム(ユーザーが能動的に閲覧した時間)」を調査。

高いビューアビリティ・レートが、必ずしも読者の高いアテンションに結びついていないことが、調査で判明した(グラフ参照)。

「インプ積み増し」からの脱却策になるか

どんな媒体社も100%のビューアビリティ・レートを提供できない。そのためクライアントからの要望を受け入れるには、インプレッションの積み増しで対応する。これにより、媒体社はビューアビリティ保証のプレミアム料金を課すことができる、というのが最近の傾向だ。しかし、スリダー氏は「ビューアビリティだけに集中することは、広告主がユーザーのアテンションについて妥協することと同義だ」と語った。

「エコノミスト」はCPH導入に際して、大企業のスポンサーを確保。CPMで取引していた広告主も予算をすべてCPHに振り向けたという。

WPP系のメディアエージェンシーMECのシーナン・リード氏はこう評価する。「より多くのメディアがタイムベース測定へと移行するようになるだろう。読者の時間に関して適切な価値付けをすることができ、広告主がより効果的にキャンペーンを打てるようになる」。

デジタルエージェンシーTrueXのジョー・マークィスCEOは、ほかのパブリッシャーがタイムベース・バイイングに焦点を合わすのは歓迎すべきだが、最初の一歩に過ぎない、と語った。「パブリッシャーが、多くのインプレッションを稼ぐことしか考えない状況から、逃れられるようになる必要がある」。

Jessica Davies(原文 / 訳:吉田拓史)*[日本版]編集部で一部加筆した。

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DIGIDAY[日本版]編集部

2015年9月1日にローンチした「DIGIDAY[日本版]」を運営。同サイトでは米「DIGIDAY」が日々配信する最新のデジタルマーケティング情報をいち早く翻訳して掲載するほか、日本国内の動向についてもオリジナル記事を配信している。メディアジーンが運営

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