野田首相に残された道は、本音でビジョンを訴える正攻法のみ

野田首相に残された道は、本音でビジョンを訴える正攻法のみ

塩田潮

 野田佳彦首相は連休の前半の4月29日~5月2日を訪米旅行に費やした。後半の3~6日は、「静かに想を練ろうと思う」と言って、4日の昼食時に連合の古賀伸明会長らと会食した以外はずっと首相公邸で過ごした。ひょっとすると、政局をにらんで裏で秘密工作を仕掛けていたのかもしれないが、公表された動静では、そんな連休の過ごし方だった。

 言葉どおり「想を練った」のであれば、どんなことに思いを巡らせたのか。連休明けからの胸突き八丁の消費税国会を考えると、実際はゆっくり想を練るなんて悠長に構えてはいられない。野田首相の現状は生きるか死ぬかの瀬戸際である。

 4月30日発表の共同通信の世論調査で、内閣支持率は政権発足後の最低の26.4%まで下落した。消費税法案への「反対」も54.1%に達している。一方で、無罪判決を得た小沢一郎民主党元代表が党員資格を回復して政治の表舞台に復帰するが、「反増税」の旗は掲げたままである。野田首相は法案成立に「政治生命を懸ける」と言い切ったが、自民党を抱き込むための「話し合い解散」作戦しか道がない。なのに、そこに持ち込む現実的なシナリオの用意があるとは見えない。要するに八方塞がりである。

 突破の方策がなければ、すぐにダッチロール、レームダックとなり、やがて死に体、立ち枯れ、野垂れ死は必至だ。鳩山由紀夫、菅直人の両政権と同じコースをたどる可能性は大きい。

 方策といっても、奇手奇策は役に立たない。これからは正攻法で、反対派の小沢氏、自民党の谷垣禎一総裁らと腹を割って何度でも話をすべきだ。その場合、マジメ人間の野田首相は「誠実に訴えればわかってもらえる」と本気で考えているのかもしれない。だが、「すでに党の方針」とか「税率10%は共通認識」といった公式論では、一歩も先に進まない。

 本音ベースで自身のビジョンやグランドデザインを訴え、それを実現するために増税に協力を、と説いて妥協点を探る。突破口はそれしかないだろう。問題は「無思想の現実主義者」といわれる野田首相にビジョンやグランドデザインの持ち合わせがあるかどうかだ。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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