死に物狂いで闘う姿を示さなければ野田首相は沈没

死に物狂いで闘う姿を示さなければ野田首相は沈没

塩田潮

 野田首相が登場してまもなく9カ月になる。だが、ここへきて、愚図で無策で消極的な弱体首相のイメージが強い。

 首相自身が「政治生命を懸ける」と叫び続ける消費税増税法案は成立のメドがまったく立っていない。「掛け声だけ」で先に進まず、八方塞がりの状態は法案の国会提出前の3月以前と少しも変わっていない。

 大型連休の後半、首相は「静かに想を練る」と言って動かなかったが、最近になって、連休前から自民党の谷垣総裁との再会談を策していたという話が伝わった。おそらく連休後半は会談のために体を空けて待っていたのだろう。

 増税法案の中身の修正に柔軟に対応する構えを示しているのを見てもわかるように、野田首相は2010年の参院選で「消費税率10%」を掲げた自民党が最後は同調してくれるのでは、と大きな期待を抱いているようだ。というよりも、増税法案の成立は「自民党の同調」の一点を突破するしか道がないという状況で、首相はそこに賭けているように見える。

 谷垣総裁との協議は必要だが、ドジョウ首相は最後に自民党が賛成してくれるはずという甘い見込み、誠実に訴えればわかってもらえるという勝手な思い込みだけが目立ち、八方塞がりを進んで打破するという強い意志は伝わってこない。

 戦略的思考に欠け、慎重すぎるという印象だ。政権運営のノウハウも乏しく、政治を動かすのに必要な人的ネットワークも欠如していて、有効な「次の一手」を繰り出せないのかもしれない。だが、懐が深く、腹が据わっていてブレないというのが持ち味の野田首相が、もし「ここで下手に自分から動けば墓穴を掘る、今は我慢のしどころ」と思っているとしたら、それは見当違いだろう。国民に強く訴え、増税と併せて取り組むべきテーマに果敢に挑む。解散・総選挙も視野に入れるなら、戦って負けない党へ、再生の道筋を示して指導力を発揮する。これらの困難な多くの課題に死に物狂いで挑戦する「闘う首相」という姿を示さなければ、八方ふさがりのまま沈没という最悪の結果を招くだろう。
(写真:梅谷秀司)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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