海外投資家は日本株を「まだ買える」とみる 中国景気、企業業績など不安材料は山積

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8月中旬に起こった世界同時株安以後、日経平均株価は1万8000円前後で一進一退し、先行きを見通すことが難しい状況が続いている。

「日本株はATM(現金自動預け払い機)だ」

最近、世界を股にかけるヘッジファンドたちの間で日本株はこう称されているという。

経済アナリストの豊島逸夫が解説する。「ヘッジファンドが7~9月の想定以上の中国株下落や商品市況の下落による株安局面で、相当なダメージを被ってしまった」。

ヘッジファンドのパフォーマンスは、世界同時株安を受けて年央から大きく低下した。損失を穴埋めするため、値上がりしていた日本株をしぶしぶ売り、「益出し」(利益確定)をしたのだ。急場しのぎで都合よくカネを引き出す対象だったいう意味で、日本株は「ATM」と称されたワケである。

実際、今年8月以降の相場で下げ幅が急だったのは、中国リスクの大きな鉄鋼セクターよりも銀行株や不動産株。内需関連にもかかわらず、流動性の高さから益出しの対象になったのだろう。

株安は日本固有の要因ではない

「株安は短期資金によるもので日本固有の要因でもない。中国などへの懸念が和らげば今後は回復に向かう」(アライアンス・バーンスタインの村上尚己・マーケット・ストラテジスト)と見る市場関係者もいる。

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一方、業績好調だった上場企業の業績をめぐる雲行きがここにきて怪しくなっているのも事実だ。中国・新興国の景気減速を主な要因として、業績予想を下方修正する企業が出始めている。業界別でとくに目立つのは鉄鋼や化学、建設機械だ。

市場参加者の多くは、この中国の減速感がある意味で構造的かつ歴史的な変化だと考えている。

「中国政府は輸出主導から内需主導への構造転換を表明している。今後の中国需要の中心は設備投資による資本財から消費者としての中国人に変わっていく」(野村証券投資情報部の伊藤高志・投資戦略課長)

「中国もいずれ、成長より個人の幸福や安全を追い求める気運が高まっていく。日本の70年代のように、スローダウンは歴史の必然」(BNYメロンアセット・マネジメントの鹿島美由紀・日本株式運用本部長)

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