消費増税は「信用される政治」の王道なくして実現困難

消費増税は「信用される政治」の王道なくして実現困難

塩田潮

 野田首相の大方針は今国会での消費税増税法案の成立だが、成否は不透明だ。というよりも、普通に考えれば成立は困難と映る。

 野党側は与野党協議に応じない。3月末までに法案を国会に提出する計画だが、民主党内の反対論も根強い。提出できたとしても、衆参ねじれで成立の見込みが立たない。結局、民自大連立や民公連立、政界再編を仕掛けるか、野党に総選挙実施を約束して成立を図る「話し合い解散」か、退陣覚悟で一点突破を狙う玉砕戦法といった非常手段しか手はなさそうだが、いずれも壁は高い。

 仮に法案が成立しても、道は遠い。

 実施前に総選挙で国民の信を問うと野田首相は言明しているが、13年夏には参院選もある。衆参の選挙で国民が「増税ノー」という答えを出せば、実施時期の14年4月の前に増税の中止法案や凍結法案が成立する可能性がある。

 その意味で、最終的に国民の判断がカギとなるから、野田首相はいまから国民の支持と理解を得る必要があるが、説明と説得は十分ではない。「増税不可避」という認識も広がっているが、一方で、低所得者の負担増、消費低迷による景気悪化の懸念、無駄の削減の不徹底などを理由とする反対論は強い。

 ほかにも増税でも財政危機は解決しないという問題、増税分の使い道への疑念、益税の問題や帳簿方式の欠陥など、不信の材料も数多い。

 説明や説得という点で何よりも重要なのは、数字や仕組みでも論理でも、トリックやごまかしを排して実態を正確に国民に知らせることだろう。

 たとえば、今回の増税分は使い道を社会保障に限った一種の目的税で、そのために区分経理を行うと説明している。目的税は新制度や新政策の導入の場合は有効だ。だが、社会保障費のように、以前から計上されてきた予算を増税後、他分野に転用するのは可能だから、結果的に増税に見合う分を債務減額に回すこともできる。それなら、きちんと「債務減らしの消費増税」と言うべきだ。

 マニフェスト不実行で「約束破りの民主党政権」という批判が強いが、消費増税のような困難な目標は、「信用される政治」という王道を歩まなければ、とても実現できない。
(写真:梅谷秀司)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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